すばる望遠鏡の新型カメラ、80億光年以上の遠方超新星を多数発見
東京大学、東北大学、甲南大学、国立天文台、京都大学の研究チームは5月30日、すばる望遠鏡(ハワイ)の超広視野主焦点カメラを使用した半年間の観測で、約1800個もの超新星を発見したと発表した。得られた遠方の超新星のデータを使うことにより、これまでより正確な宇宙の加速膨張の値を導出できることが期待される。
超新星は、星が進化の最終段階で起こす大規模な爆発現象で、その際に生じる輝きは太陽の10億倍以上に相当する。超新星の中でも、近接した連星系の核爆発によるものをIa型と呼び、増光の最大の明るさがほぼ一定であることから、見かけの明るさの変化によって超新星までの距離を知ることができる。また、Ia型よりも5~10倍明るい超高輝度超新星が近年発見されており、これらを検出できれば、より遠くの超新星を観測できたことになり、宇宙初期に形成された大質量を持つ星の性質を知る重要な手がかりとなる。
今回、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の安田直樹教授を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを使い、ろくぶんぎ座方向の COSMOS領域における超新星の明るさの変化を2016年11月から2017年4月の半年間にわたり繰り返し観測した。
すばる望遠鏡は8.2mという大口径の主鏡を持ち、集光力が高いため遠くの暗い天体まで観測できる。また、この望遠鏡に搭載した超広視野主焦点カメラは独自に開発したCCD素子を104個、合計8億3200万画素(1CCDあたり4000×2000画素)を持ち、満月9個分に相当する天域を一度に撮影できる。半年間の測定により得られた画像から機械学習などを使って超新星を検出することで、1824個の超新星を発見した。
異なる色のフィルターで得られた光度曲線から超新星のタイプを分類したところ、Ia型が433個あると考えられ、そのうち58個が約80億光年より遠くにあることが分かった。これは、今回の半年間の観測では、ハッブル宇宙望遠鏡が10年かけて発見した50個弱という数を上回る遠方超新星を研究チームが発見したことを意味する。また、約100億光年ほどの距離にある超高輝度超新星も5個発見された。
これらのデータを使うことで、これまでよりも正確な宇宙の加速膨張の値が求まると期待され、宇宙の膨張を加速しているダークエネルギ―が時間と共に変化しているのかどうかを今後調べていくという。
この成果は、Publications of the Astronomical Society of Japan(欧文研究報告)のオンライン版に5月30日付で公開された。
今回発見した超新星(赤点)の分布。青い丸が超広視野主焦点カメラの視野。右上の満月の写真は領域の大きさの比較のために表示。(Credit: Kavli IPMU, Partial data supplied by: SDSS)
今回発見した超新星の例(3枚1組の写真が一つの超新星の変化を示す)。左から順に爆発前、爆発後、超新星の様子。(Credit: N. Yasuda et al.)
(冒頭の写真はイメージ)