地域活性の鍵を握る「関係人口」 魅力あふれる福島県川内村の取り組み 後編
地域活性化の取り組みに力を入れる福島県双葉郡川内村。前編では地域の持つ豊かな資源や文化財を紹介した。後編では、地域や地域住民と多様な形で関わる「関係人口」を増やす誘客の様子を取り上げたい。
地域資源を活かした取り組み
ゴールデンウィーク中の4月30日には、地元小学生の発案で始まり今年で第4回となる、「川内の郷 かえるマラソン」が開催された。名前の由来は、村のシンボルとなっているモリアオガエルや、全村避難から村に「帰る」、村を「変える」、ランナーを毎年「迎える」という思いが込められているという。川内村にちなんで、マラソンランナーの川内優輝選手が参加するなどしたことで、村全体が活気にあふれた。
さらに、年間を通じてランナーを誘客するため、ランニングコースや民泊・農泊の整備などを進める「ランナーズ・ヴィレッジ」というプロジェクトにも取り組んでいる。地域おこしのために移住した方が中心となって、村中に11のコースを設定し、走りながら観光スポットを巡れるように作られている。
「何気ない道を、走りたくなる道へ」をコンセプトに、観光プロジェクトが進む
また5月3日には、自然山通信主催のツーリングトライアル大会が開催された。ツーリングトライアルとは、坂を上ったり岩を越えたりするエリアを何カ所か作り、バイクでいかにうまく走れるかを競うゲームで、山中の廃道などを含む約40kmを走る。なかには村民の庭先を通過することもあり、何ともシュールな光景だ。レースという競争的な雰囲気よりは、仲間内でチームを作って助け合いながらコースを走ったり、村の人たちを交えた前夜祭が開催されたりと、村内外の人々との繋がりを大切にする温かい空気が流れていた。
オフロードバイクで川を渡る選手。バランスを崩して足をついたら、ペナルティの1点が加算される。
地域のもつ、人を引き寄せる何か
地域おこしというと、地元の人からは「うちには何もない」という声をよく聞くが、“よそ者”からすれば、地域資源の宝庫だ。川内村も、自然や村人の温かさなどの魅力に引き寄せられて、観光にとどまらず、マラソンなど様々な形で村に関わる人が集まっていた。「地域活性」や「復興支援」といった題目ではなく、地域の魅力に先に気づいた人がさらに人を呼び、眠っている宝を掘り起こし、その資源が最大限活用されることで、地域も都市も豊かになる…。そのような自然な流れが各地で形成されつつある。
村内の「いわなの郷」には養魚場があり、いわな釣りが楽しめる。釣った魚をその場で焼いて食べる味は格別だ。