【コラム】16歳の少女グレタの「未来の世代」からの警告
5月半ば、スーパーマーケットの野菜売り場に行くと、今までプラスチック製だったマッシュルームのケースが紙製に代わっていた。
私はドイツ南部の町に暮らしているが、最近プラスチックゴミ問題や気候変動問題に対する社会の関心がリアルに高まってきているのを感じている。北ドイツのキールにある、包装ゴミを一切出さない主義のパッケージフリーショップのオーナーも、「昨年から店の売り上げが大きく上がった」と話していた。ドイツでは今年初めから、プラスチックゴミを規制するための法律が施行されている。
環境問題への意識が高いイメージがあるドイツだが、欧州全体で早急な対応を迫られているプラスチックゴミ問題において、実は排出量でEU平均を上回っている問題児なのだ。もちろん、これまで社会全体がこれらの問題に対して、決して関心を示してこなかったわけではない。しかし、現状に理由をつけるのだとしたら、「私たちが、豊かな社会で楽に生きることに慣れてしまっているから」というのはだれもが否めないだろう。
昨年、この「楽に生きること」に一石を投じた少女がスウェーデンに現れた。彼女の名前はグレタ・トゥーンベリ。現在16歳のグレタは昨年8月、気候変動への取り組みを訴えて学校を休み、スウェーデン国会前で2週間座り込みを続けて話題になった。彼女の活動と主張は欧州をはじめ世界各国の若者の賛同を集め、いまやドイツ各都市でも多くの中高生たちが金曜日に学校を休み、「フライデーズ・フォー・フューチャー(未来のための金曜日)」と呼ばれるデモに参加するようになった。グレタは国連の気候変動会議などに招かれ、さまざまな国の首脳たちに会い、ローマ法王にも謁見した。「私たちの未来はもうないかもしれない」「確実な方法を知っている人は誰一人としていません。しかし、化石燃料の燃焼をやめて自然を再生し、未だに明らかになっていないことを元の状態に戻す必要があります」と大人たちに向かって訴える。
グレタは、今までだれも知らなかったセンセーショナルな事実を発見したと叫んでいるのではない。これまで目の前にありながら、大人たちが抜本的な対策を講じず目を背け続けていたことに対し、それを指摘し、まさに「王様は裸だ!」と叫んでいるのだ。そしてこの10代の子どもたちの声に今、大人たちは耳を傾け、それに賛同する動きが起こり始めている。5月下旬に実施されたEU議会選挙では、ドイツをはじめとする各国で「環境問題」が選挙の主眼となり、環境保護を旗印に掲げる緑の党が大躍進を遂げた。
地球環境は人間自身が作り出したものではない。何世紀にもわたって人類が享受してきた大きな恩恵、そして次世代に受け継ぐべき貴重な財産なのだ。10代の女の子1人が上げた声が、人々の意識を改めてそのことに向けさせ、「楽に生きる」生活を振り返るきっかけを与えたことは興味深い。彼女は今年4月、英国議会でのスピーチ冒頭でこのように語っている。「私の名前は、グレタ・トゥーンベリ。16歳です。(中略)未来の世代を代表して話します」
*グレタ・トゥーンベリさんの英国議会でのスピーチは、ハフポスト日本版に掲載された日本語訳を引用させていただきました。