「子どもの権利条約」から30年 世界の子どもたちを取り巻く環境は今

「子どもの権利条約」から30年 世界の子どもたちを取り巻く環境は今

世界中のすべての子どもたちがもつ“権利”について定めた「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」が、今年で採択から30年を迎える。世界の多くの国々では戦争や貧困といった状況下に子どもたちは置かれ、学校に通えなかったり、不当な差別にさらされるなどの問題に直面してきた。子どもの命と健やかな成長を守るために定められた「子どもの権利条約」とは何か、見ていきたい。
 

世界で最も広く批准されている条約

子どもの権利条約は1989年に国連で採択され、1990年、国際条約として発効した。日本では1994年に批准されている。草案づくりに参加したユニセフの世界的な働きかけもあって、2019年現在、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約され、世界で最も広く批准されている国際人権条約となった。

この条約は18歳未満を子どもと定義し、大人と同じようにひとりの人間として持つべき権利を認めるとともに、大人へと成長する過程にあって弱い立場にある子どもたちが保護や配慮を受けられるよう、子どもならではの権利も認めている。

条約には子どもの権利として、大きく分けて次の4つが定められている。

・生きる権利:すべての子どもの命が守られること
・育つ権利:もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること
・守られる権利:暴力や搾取、有害な労働などから守られること
・参加する権利:自由に意見を表したり、団体を作ったりできること
日本ユニセフ協会HPより引用)
 

これまでの成果と未来に向けて

条約の採択後、多くの国々が子どもの権利の実現と、子どもたちが直面する課題の解決に向けて、法改正や予算の増額など、様々な努力を続けてきた。その成果の一つとして、ユニセフの発表によると、5歳未満の子どもの死亡者数は年間1250万人から540万人へと半減。学校に通えるようになり、児童労働から解放された子どもの数が増加したことが報告されている。

一方、この30年で子どもを取り巻く環境は大きく変化したものの、今もなお世界では4人にひとりの子どもが災害や紛争などの緊急事態にある国や地域で暮らし、移民や難民となることを余儀なくされている子どもも少なくない。また、日本の社会に目を向けると、虐待やいじめの問題、痛ましい事件に巻き込まれるなど、決して子どもたちの権利が十分に守られているとは言えないのが現状だ。未来を担う子どもたちの健やかな成長のために、子どもに関わる全ての人が子どもの権利を認め、権利の実現のために行動し努力することが、今なお必要とされている。

(写真はイメージ)