地球外知的生命は存在するのか? 電波信号を探して1327個の星を調査
地球外知的生命が発信した電波を探す「ブレイクスルー・リッスン」(BL)プロジェクトを運営するカリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、これまでに地球から163光年(50pc)以内にある1327個の星を調査したが、それらしいものは捉えられなかったと発表した。この論文は「ジ・アストロフィジカル・ジャーナル」に17日に掲載された。
50年以上続く電波信号の探査
この研究は、2015年にロシアの起業家ユーリ・ミルナー氏が1億ドルの資金を投じた、地球外知的生命探査(SETI)「ブレイクスルー・イニシアチブ」の1つとして行われたもので、SETIには物理学者のスティーヴン・ホーキング氏やフランク・ドレイク氏らも関わっていた。
地球外知的生命が存在し一定の技術水準に達しているならば、意味のある電波信号を発信しているはずとの仮定に基づき、ドレイク氏が電波信号の探査を開始したのは1961年。その後、探査の感度とスピードは、技術の進歩とともに向上してきた。当初は数百ヘルツの周波数帯域で探査していたのが、80年代にはキロヘルツ、90年代にメガヘルツ、そして現在はギガヘルツにまで拡大され、より精密な測定が可能になってきた。
3年間の観測結果と今後の研究
BLプロジェクトでは、2016年から10年に渡って電波望遠鏡と光学観測を通して地球外知的生命の兆候を探す計画だが、今回は2016年1月から2019年3月にかけての観測結果を報告した。この期間に、米国ウェストバージニア州にあるロバート・バード・グリーンバンク天文台(北半球)の直径100 mの電波望遠鏡で1138個の星を観測し、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にあるパークス天文台(南半球)の直径64 mの電波望遠鏡で189個の星を観測した。
合わせて1327個の星を1.10~3.45ギガヘルツの範囲で探査したが、電波干渉に起因しない説得力のある電波信号は見つからなかった。一方、定期的な周波数の変化を示す信号で、一定のしきい値を超えたものは5100万件以上見つかり、自動検証テストに合格した6154件が特定された。しかしこれらのいずれも、より厳密な手動検査には合格しなかった。
この結果から、宇宙の中で知的生命が非常に稀であると結論付ける前に、更なる追加の観測や理論的研究が検討されている。将来の研究では、高時間分解能のデータからパルス信号を検索し、より広い帯域幅をカバーする洗練された検索を行う予定だ。
画像提供:グリーンバンク天文台