「日本で一番海に近い暮らし」を営む 京都・伊根の舟屋群
京都といえば、歴史的な寺社仏閣や桜、紅葉などの四季折々の自然美が有名で国外からも多くの観光客が訪れる日本有数の観光地。寺社仏閣が密集する京都市は多くの人が集まるが、京都の見どころはそこだけではない。少し足を延ばして北の方に行くと森や海が身近に感じられる地域があるが、その中でも「海の京都」と言われる日本海側のエリアはまだ観光客が少ない落ち着いた場所だ。なかでも伊根湾沿いは舟屋と呼ばれる民家が立ち並び、「日本で一番海に近い暮らし」をしている珍しい地域だ。
伊根の舟屋群は京都府与那群伊根町にある。人口およそ2100人の小さな町で、多くの人が農業と漁業を営んでいる。注目すべきは海にぎりぎりの場所に立つ家々。伊根湾を取り囲むように建つ230軒の舟屋群だ。
ここは重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、江戸時代後期からの建物もある。舟屋は1階部分が船着き場になっているため、家が半分海に乗り出す形で建っている。陸側の狭い路地も風情があり歴史を感じる風景だが、表からは木造の住居としかわからない。しかし、中に入ってみると不思議な空間が広がっている。1階は奥の壁がなく、家の中に光と海が直接入り込んでいる。波の音を身近に感じ、水面からの光の反射がゆらゆらと動く神秘的な空間だ。舟屋を海側から見るなら30分に1本出ている遊覧船に乗るのがおすすめ。静かな湾内にびっしり並んだ舟屋は、派手さはないけれど、他では見ることができない風景だ。昔からここで自然と共存してきた町の人たちの海との距離の近さを、舟屋群を通して感じられる。
伊根の舟屋群は観光地化されておらず、すべてが個人所有の建物なので、見学の際にはプライバシーへの配慮が必要。舟屋の内部を見学したい人のために、見学者用に開放してある舟屋もある。また、レストランや舟屋を利用した民宿もあるので、宿泊しながら海を近く感じるのは最高の贅沢ではないだろうか。少し上ったところにある「道の駅 舟屋の里 伊根」からは伊根湾が一望でき、近くで見る舟屋とはまた違った風景を楽しむことができる。
遊覧船
営業時間:9~16時
毎時0分、30分毎に運航(約25分周遊)繁忙期、多客時には15分毎に運航
運賃:大人800円、子供400円