養豚場からの温室効果ガスを8割削減 炭素繊維リアクターで可能に
農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)は23日、養豚汚水浄化処理施設における温室効果ガスの排出を、約80%削減することに成功したと発表した。従来の活性汚泥を利用した処理技術ではなく、炭素繊維リアクターという炭素繊維を使った生物膜法を採用した。
この実証試験は、岡山県農林水産総合センターと岡山JA畜産との共同で行われたもの。温室効果ガスを大幅に削減することを可能にしたのは、炭素繊維リアクター(以下、リアクター)という技術で、これは炭素繊維担体に汚水浄化を担う微生物を付着させて汚水を浄化するという仕組みになっており、農研機構が2015年に開発した。
炭素繊維表面に形成される生物膜の表層と深層で起こる反応により、アンモニウムイオンから窒素ガスへの転換がスムーズに行われ、過度の一酸化二窒素※の放出が回避される。今回はこれを肥育豚6000頭規模の農場の汚水浄化処理施設に導入し、温室効果ガスの削減効果を検証した。その結果、処理水中窒素量あたりの一酸化二窒素発生量は、導入前に約4%だったのに対し、導入後は0.5%に削減された。リアクター導入前(2016年10月~2016年11月)と導入後(2016年12月~2017年1月)では処理中に含まれる窒素量が異なるため単純な比較は難しいが、リアクター導入によって温室効果ガスの発生量を5分の1に抑えられると推定された。もし、全国の処理施設にリアクターを導入すると、温室効果ガスの排出量を二酸化炭素等量で年間60万トン削減することが可能になる。
日本の養豚由来の温室効果ガスは農業系排出の10~15%を占めると算定されており、地球温暖化対策を進めるには、これを抜本的に削減する技術の開発と早期普及が求められている。今後は実証試験を継続しつつ、さらに国内3カ所の浄化処理施設で実証試験を行う予定。窒素除去効果を検証するとともに、リアクターの改良や低価格化も進めるとしている。
※一酸化二窒素は浄化処理で発生する温室効果ガスの99%以上を占める。