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アルマ望遠鏡が110億年以上前の巨大銀河を発見 深まる銀河進化の謎

アルマ望遠鏡が110億年以上前の巨大銀河を発見 深まる銀河進化の謎

東京大学の河野孝太郎教授らは、南米チリで運用中のアルマ望遠鏡を用いて、110億年以上さかのぼった過去の宇宙に、星を活発に生み出している巨大銀河を39個発見した。今回発見された銀河はいずれも米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡では見えておらず、これまでの可視光や近赤外線での観測では星を形成している多くの巨大銀河を見落としていたことになる。この発見は、7日付の英国の科学雑誌『ネイチャー』オンライン版に掲載された。

 

アルマ望遠鏡がとらえたサブミリ波

天文学者たちは、これまでに様々な望遠鏡を使って遠くに見える、すなわち過去の宇宙を観測し、生まれたての銀河や活発に星を生み出す銀河を発見してきた。なかでも、ハッブル宇宙望遠鏡は宇宙空間から観測できるため、得られたシャープな画像にはおびただしい数の銀河が写し出されており、この分野で中心的な役割を果たしてきた。

しかし、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えることができるのは可視光と近赤外線のみであり、大量のちりを含む銀河の場合、星からの光が塵によってさえぎられるため撮影できなかった。こうした銀河では、より波長の長い赤外線のほうが放出されやすくなる。さらに、宇宙の膨張によって光の波長が引き伸ばされるため、過去の宇宙に存在するこうした天体をとらえるには、赤外線よりさらに長い波長の「サブミリ波」で観測する必要がある。アルマ望遠鏡は、塵が出すサブミリ波をとらえ、詳細に研究できるという特徴がある。

 

110億年前の宇宙に存在した巨大銀河

今回、ハッブル宇宙望遠鏡の画像には写っていないが、それよりも少し波長が長い赤外線で観測するスピッツァー宇宙望遠鏡の画像に写っていた天体63個を選び出した。そして、アルマ望遠鏡を用いてサブミリ波で詳細に観測したところ、このうち39個の天体からサブミリ波が検出された。アルマ望遠鏡の高い解像度と得られたサブミリ波の強度から、この39個の天体はいずれも星を活発に形成中の巨大銀河で、110億年以上前の宇宙に存在していたことが分かった。それらの銀河の質量は太陽の数100億倍から1000億倍と、私たちが肉眼で見ることができる天の川銀河と同等かやや小さい程度であり、110億年以上昔の宇宙では例外的に巨大な銀河だ。さらに、赤外線とサブミリ波の明るさを総合すると、星を生み出すスピードも現在の天の川銀河の100倍以上のペースであると推定されている。

 

銀河進化の理解に多くの謎

しかし、今回の研究で一つの大きな謎が生まれた。これまでの宇宙膨張モデルに基づく理論モデルやシミュレーションでは、これほど多くの巨大星形成銀河が宇宙の初期に存在するとは考えられていなかった。さらに、広く受け入れられているダークマター(暗黒物質)によって宇宙の構造が形成されるという理論モデルでも、これほど多くの巨大天体を作ることはできない。今回の観測によって、銀河進化の理解にはまだまだ未解明な点が多いことが浮き彫りになった。アルマ望遠鏡や近未来に打ち上げが期待されるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、宇宙赤外線望遠鏡スピカなどを用いたさらなる観測研究が期待されている。

画像提供:国立天文台