DNAから絶滅した古代人類「デニソワ人」の骨格形態を推定

DNAから絶滅した古代人類「デニソワ人」の骨格形態を推定

イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の研究チームが、DNAの化学変化を分析することで、これまで不明だったデニソワ人の姿を初めて推定した。細長い顔や広い骨盤といったネアンデルタール人と同じ特徴もあるが、顎の歯列が長く、頭骨の幅が広いなどのデニソワ人固有な特徴も持っているという。この方法で、化石では残らない解剖学的特徴を再構築できると結論付けている。米科学誌『セル』に9月19日付で発表された。

DNAから絶滅した古代人類「デニソワ人」の骨格形態を推定
推定されたデニソワ人の姿(Maayan Harel)

デニソワ人は、2008年にシベリアの洞窟で発見された絶滅したヒト族のグループ。これまでに小指の骨と頭蓋骨、顎骨の破片と、いくつかの歯しか見つかっていない。これらの化石はどれも、多くの解剖学的詳細を再構築できるほどの大きさを備えていなかった。

研究チームは今回、遺伝子活性を変化させる可能性のあるDNAの化学変化に基づいて、デニソワ人の姿を推定することを試みた。DNAの化学変化は、生涯を通じて身体の発達や疾患、およびほとんどの生物学的特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。研究チームは、その中でも「DNAのメチル化」と呼ばれる、ヒトのように複雑な生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みに着目し、研究してきた。DNAに経時的に生じる化学的損傷のパターンを分析することで、かつてメチル化されていた古代DNAの一部を特定する方法を確立し、2014年には、ネアンデルタール人とデニソワ人のゲノム全体のメチル化パターンをマッピングして、絶滅人類と現代人の間でこれらのパターンが異なる遺伝子を同定した。

今回の研究で、同チームはデニソワ人とネアンデルタール人のメチル化パターンが、現代人のそれとは異なるゲノムの数千の領域を特定した。これらを遺伝子発現への影響が知られているヒト組織の化学変化のデータベースと比較し、発現レベルが異なる何百もの遺伝子リストを作成した。その後、外見の特性と関係のあるメチル化のパターンを抽出した。この方法でネアンデルタール人とチンパンジーの骨格形態をうまく予想できるかテストしたところ、85%を超える精度を得た。

その後、同じ方法をデニソワ人に適用したところ、低い額や広い胸郭など、ネアンデルタール人と多くの特徴を共有している一方、より広い顎と頭蓋骨を含むいくつかの違いが推測された。これらのいくつかの特徴は遺跡で見つかった化石骨によって裏付けられている。2019年5月にチベット高原で見つかった16万年前の下顎骨は、4つの特性のうち3つの予測と一致したし、シベリアのアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟で発見された頭蓋骨は、このグループの頭骨の幅が広いことを示唆しているという。

(冒頭の写真はイメージ)