明るい場所と暗い場所で目が慣れる分子メカニズムを解明 阪大
大阪大学蛋白質研究所の古川貴久教授と茶屋太郎准教授の研究グループは、「明暗順応」と言われる、明るい場所でも暗い場所でも光の強度に応じて適切に物体を見ることができる機能の分子メカニズムを明らかにした。光による長期的なダメージや老化が原因とされる網膜変性疾患の治療へ応用されることが期待される。研究成果は7日付の「The EMBO Journal」に掲載された。
私たちの視覚には、明るい場所でも暗い場所でも光の強度に応じて適切に物体を見ることができる「明暗順応」という機能がある。網膜にある細胞が光を受容し、電気信号に変換することから始まり、光が強い場所では光に対する感度を下げ、暗い場所では光の感度を上げることで、適切に物を見ることができる。この「明暗順応」は、適切に物を見るために必要なだけでなく、光によるダメージから眼を保護する機能を担っている。これまで、光に対する感度を調整するために、トランスデューシン(Transducin)という光情報を伝えるタンパク質の細胞内での移動が関わっていることが知られていたが、詳細な分子メカニズムは分かっていなかった。
同研究グループは、明暗応答がKlhl18というユビキチン化酵素により制御されることを発見し、一連の分子メカニズムを明らかにした。明るい場所では、Unc119というタンパク質がトランスデューシンと結合し、トランスデューシンを細胞内の「細胞体」という場所に移動させることで光に対する感度を下げているが、暗い場所では、Unc119がKlhl18によるユビキチン化によって分解され、トランスデューシンが細胞体から外節に移動することで光に対する感度が上がるということを突き止めた。また、明るい条件では、Unc119がリン酸化されているため、Klhl18によるUnc119の分解が抑えられていることが分かった。
今回発見した明暗順応の仕組みを利用することで、視細胞を光による長期的なダメージや老化から守り、加齢黄斑変性や網膜色素変性症をはじめとする網膜変性疾患の治療薬の開発に繋がることが期待される。
(写真はイメージ)