南ドイツで新種の化石類人猿を発見 人類の進化の謎に光
人類の直立二足歩行はいつ、どのように始まったのか――?
この問題の手掛かりとなる論文が、英科学誌『ネイチャー』に掲載された。ドイツ・テュービンゲン大学のマデレーヌ・ベーメ教授は6日、新種の化石類人猿がドイツで発見されたことを報告。それによると、この化石類人猿は二足歩行するための骨格の適応という特徴を備えており、現生のチンパンジーやボノボよりも、さらに現生人類の姿に近い存在であるようだ。
類人猿の進化の謎
人類が直立二足歩行できるように進化する過程については、主に木に住んでいた祖先から進化したのか、それとも地面を四足で歩いていたところから立ち上がって二足で歩くように進化したのか、推測がなされている。
現世人類に最も近いとされるチンパンジー、ボノボ、ゴリラといったアフリカの現生類人猿から推測すると、彼らは食べたり眠ったり、保護が必要なときに木の中に入るが、ほとんどの時間を地面で過ごし、歩く際に前足を地面につけて四足で歩行する「ナックル・ウォーク」を用いている。
人類との密接な遺伝的関係を考えると、人類の二足歩行はナックル・ウォークをしていた祖先から進化したと主張する説があるが、現生類人猿の行動様式も、人類と同じ時間をかけた進化の結果であることに注意する必要がある。約440万年前のラミダス猿人の骨格は現生類人猿とは明らかに異なっているが、アフリカの類人猿の場合、どのように進化してきたかを明らかにする化石が見つかっておらず、私たちの共通祖先についての謎をさらに深めていた。
ダヌビウスは直立二足歩行だったのか?
今回、南ドイツのバイエルン州アルゴイ地方から見つかった、完全な手足の骨が保存されている化石類人猿「ダヌビウス・グッゲンモシ」は、「手足を伸ばした姿勢でのよじ登り」と命名された新しい行動様式を示す証拠を提供した。
1162万年前の中新世時代(約2300万年~500万年前)に生息していたダヌビウスは、アフリカの類人猿の祖先であると考えられるドリオピテクスや、他のヨーロッパの後期中新世の類人猿と歯型的に最も似ている類人猿。ダヌビウスの前肢は後肢に対して長く、柔軟な肘とモノを握ることが可能な手の骨を備えていることから、前肢で木にぶら下がることができたと考えられる。
しかし、二足歩行をしていたかのような長くまっすぐな後肢も備えていた。大腿骨と脛骨の関節の形状は、現生のアフリカの類人猿が時折二足歩行で地面や木を歩くときに使用する曲がった腰と膝とは異なり、直立二足歩行の姿勢であったことを示している。ただし、後肢にはつかむのに適した長く丈夫な指も備えている。
ダヌビウスが定常的に直立二足歩行で地面を歩いていたかどうかは不明だが、完全に地上に降りる前の二足歩行を始めたばかりの類人猿であり、現生類人猿と人類の共通祖先のモデルとなり得ると同論文では結論付けている。
(写真はイメージ)