グレートバリアリーフの海洋熱波 人為的気候変動による影響を分析
沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)海洋気候変動ユニットは19日、オーストラリアのグレートバリアリーフに住む魚が、2016年の海洋熱波の影響により、分子レベルで変化していたことを発見したと発表した。この研究は海洋熱波の発生頻度が増えるにしたがって、海洋生態系の健全性に長期的な影響を与えることを示唆している。研究結果は「Science Advances」に掲載された。
2016年、オーストラリアのグレートバリアリーフが海水温の急激な上昇により壊滅的な被害を受けた。こうした海洋熱波は人間活動が引き起こす気候変動により頻度や期間、規模が増しているが、魚の数に及ぼす生理学的・行動的・長期的影響の全容は把握できていなかった。
OISTの海洋気候変動ユニットは、オーストラリアのジェームズ・クック大学ARCサンゴ研究センターおよび香港大学との共同研究を行い、2016年の海洋熱波発生時とその前後にサンゴ礁で採集した魚5種の肝臓の遺伝子発現パターンを調査した。魚は個体数が多く捕獲が容易なスズメダイとカーディナルフィッシュを用いた。遺伝子を分析した結果、熱波にさらされた期間が長いもの、短いもののどちらにも、代謝・ストレス・呼吸に関連する分子レベルでの変化があることがわかった。このような分子レベルの証拠によって、気候変動に順応または適応する方法には遺伝的背景が大きく影響し、海水温上昇に対する反応は熱帯魚の種によって違うことが明らかになった。また、海洋熱波に対する魚の生理反応は、種に関係なく、熱波の強度と期間に依存することが分かった。
気候変動ユニットは今後、人為的気候変動が即時的に魚に与える影響の調査を継続し、海水温上昇の繰り返しが、魚とその長期的な適応に与える影響を研究していくという。
画像提供:Tane Sinclair-Taylor