18桁精度の可搬型光格子時計の開発に世界で初めて成功 一般相対性理論を検証
東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授と理化学研究所の高木将男研究員らの共同研究グループは7日、島津製作所と共同で18桁精度の超高精度な可搬型光格子時計を開発したと発表。この時計によって東京スカイツリーの地上階と地上450mの展望台に設置した2台の時計の進み方を測定、一般相対性理論による時間の違いを確認することに成功した。従来の、原子時計を人工衛星やロケットに搭載して地表との間で約1万kmの高低差をつけることで測定していた実験に比べて、今回開発した可搬型光格子時計を使うことで1万倍以上少ない高低差で同等の実験が可能になった。
この研究結果は6日(英国時間)発行の英国科学誌「Nature Photonics」に掲載された。光格子時計の18桁精度とは、百億年に1秒のずれに相当する。これまでの最高性能のセシウム原子時計で16桁精度であった。
光格子時計は、「魔法波長」と呼ばれる特別な波長のレーザー光を干渉させて作った微小空間(光格子)に原子を捕獲させて作る。この状態では原子同士の相互作用が起きず、また原子がレーザーによって同じ大きさのエネルギーシフトを受けるため、光を吸収する「原子の振り子」の振動数が変化しない。この振動数から1秒の長さを決める。研究グループではシステムの小型化・可搬化を実現し、実験室以外の環境でも18桁精度を実現する可搬型ストロンチウム光格子時計を開発した。
研究グループはこの可搬型光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台の2カ所に設置して450mの高低差を与えた上で、2台の光格子時計の周波数差を測定した。その結果、展望台の時計が地上階の時計よりも1日あたり4ナノ秒(ナノは10のマイナス9乗)早く進んでいることを確認した。これはアインシュタインの一般相対性理論による、重力が強いほど時間の進み方が遅くなるという現象の検証になった。
可搬型超高精度時計は、プレート運動や火山活動などによる近くの数cm精度の上下変動の監視に用いることができ、また地下資源探査、地下空洞、マグマ溜まりの検出などが期待できる。研究グループでは今後のさらなる時計の小型化、可搬化を加速し、新たな測地技術への応用を進めていくとしている。