ソーシャル・ディスタンシング WHOが「物理的距離」を強調
新型コロナウイルスの感染拡大防止策を語る際に、「ソーシャル・ディスタンシング(Social distancing)」という言葉がよく聞かれるようになりました。特に緊急事態宣言後、スーパーマーケットでは間隔をあけて並ぶ、お店の席を一つ空けて座るなどさまざまな生活の場面で「社会的な距離を取ること=ソーシャル・ディスタンシング」が求められています。
一方で、よく混用される言葉に「ソーシャル・ディスタンス(Social distance)」という似たものがあり、この二つは明確に区別する必要があります。正しく感染拡大防止のための行動をとることができるよう、その言葉の意味を解説します。
ソーシャル・ディスタンシングとは公衆衛生用語で、感染拡大防止を目的として人と人が社会的な距離を確保することを指します。具体的な距離は国によって定義が違うところもありますが、アメリカの疾病管理予防センター(CDC)はこれを2メートルと定義しています。
一方、ソーシャル・ディスタンスは社会学において個人と個人、集団と集団の距離感のことを指し、その距離が近いほど親密であることを示す心理的な意味を持ちます。つまりソーシャル・ディスタンシングとソーシャル・ディスタンスはまったく異なる意味を持つ別の言葉なのです。
前述のとおり、ソーシャル・ディスタンシングはあくまで物理的な距離を作ることを意味しています。世界保健機関(WHO)では、愛する人や家族との関係を社会的に絶つわけではなく、人と人とのつながりは保ってほしい、という思いから「ソーシャル・ディスタンシング」の代わりに「フィジカル・ディスタンシング(Physical distancing)」が使われています。
新型コロナウイルスにより身体だけでなく精神的な健康も影響を受けており、ツイッター上で「疲」や「ストレス」といったキーワードを含む投稿が増えていることが、東京大学の鳥海不二夫准教授(計算社会科学)の調査で分かりました。長引く外出自粛や学校休校で友人に会えないことなどが影響していると考えられています。
SNSや仮想空間など、直接会わなくても交流できる手段をうまく活用して、精神的に孤立したり健康を損なったりしない配慮をしつつ、正しい「ソーシャル・ディスタンシング」を守りたいものです。
(写真はイメージ)