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家で過ごす時間に子どもと読みたい名作3冊

[書評]STAY HOMEで子どもと読みたい名作3選

コロナ対策で、家にとどまる時間が続いています。多くの不安や心配が社会を覆っている中で、これまであたりまえだと思っていたものの大切さに気づくことも多くあるのではないでしょうか。

ニュースソルトでは、大人にも子どもにも大切な気づきを与えてくれる、長年読み継がれてきた名作絵本3冊をご紹介します。

『ほんとうにたいせつなもの』

木彫りの小人、ウィミックスたちが暮らす小さな村では、箱とボール集めが大流行。箱やボールをたくさん持っているほど偉いと評価されるようになっていった。主人公のパンチネロも、箱集めに夢中になり、寝る間も惜しんで必死に働き、とうとう家まで売り払ってしまう。たくさんの箱を手にして、みんなから「立派なウィミック」と評価され、気分のよいパンチネロだったが、最近なぜか様子がおかしい。流行の箱集めに心を奪われて、大切なものをすっかり忘れてしまっていたのだ。

「ほんとうにたいせつなもの」は、全米で100万部を超え、7カ国語に翻訳されているベストセラー絵本「たいせつなきみ」の続編。1作目は自分という存在の大切さに焦点を当てて書かれているが、2作目のこの本は「物質主義」に焦点が当てられている。

資本主義が発達する中で、人々が物質主義に走るようになった現代社会の中で、私たちは他人の評価を気にしたり、自分が何を持っているのかを気にして生きるようになってしまった。見失ってしまった「ほんとうにたいせつなもの」とはいったい何なのか? 大人の方にもおすすめしたい一冊。(推薦者:芳山喜代)

書誌情報

『ほんとうにたいせつなもの』
著:マックス・ルケード
絵:セルジオ・マルティネス
翻訳:松波史子
発売日:2001年11月5日
発行:フォレスト・ブックス

『ふたりはともだち』

のんびり屋さんのがまがえるくんと、しっかり者のかえるくんの、思わず笑みがこぼれる愉快な日常を描いた5話を収録した絵本。性格は真反対な2匹だけれど、共通しているのは、相手のことが大好きなこと。だから、怒ったり笑ったり、率直に気持ちを表しても、お互いを思いやる心がこぼれるように伝わってくる。素朴な挿絵も印象的。

特に5話目の「てがみ」は、友達がいないからだれからも手紙が来ない、それでも郵便受けの前に座って手紙を待っているがまがえるくんに、かえるくんがサプライズで手紙を書いてあげるお話。かえるくんに頼まれたかたつむりさんが急いで(?)4日間もかかって届ける手紙を、肩を寄せ合って待つ仲良しの2匹の挿絵がとても微笑ましい。

今年は家族と過ごす時間が増え、休暇中もどこにも行くことができない中で子育てに疲れるときもあるけれど、大切な相手がいるからこそ得られる幸せな気持ちを大切にしたいと思わせる1冊。(推薦者:三上誠)

書誌情報

『ふたりはともだち』
著:アーノルド・ローベル
翻訳:三木卓
発売日:1972年11月10日
発行:文化出版局

『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』

歯磨きの大切さを小さな子どもに伝える絵本はいろいろあるが、この絵本が素敵なのは、とにかくユーモアにあふれていること。「虫歯にならないように歯を磨こう」という単純だけれど重要なメッセージを、愉快なストーリーで伝えてくれる。

歯を痛めたわにさんが、行きたくはないけれどしかたなく歯医者さんに行くと、歯医者さんから怖がられてしまう。しかし歯医者さんが決心して治療をしてくれ、わにさんがお礼を言って別れるとき、心の中でわにさんも歯医者さんも思っていることは同じで、「もう二度と会いたくない」。最後には、「だから、歯磨き、歯磨き」と、肝心なメッセージにつながっていく。挿絵もとてもユーモラスで、わにさんと歯医者さんの困ったような目が印象に残る。

小さなお子さんに、楽しく歯磨きの大切さが伝わりますように!(推薦者:三上誠)

書誌情報

『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』
著:五味太郎
発売日:1984年6月1日
発行:偕成社

(冒頭の写真はイメージ)