社会生活が変わる今、改めて読みなおしたい名著(2)
4月から続いた外出自粛期間も徐々に解除されている。長く続いたこの期間に「久々に本を読んだ」という人も多いのではないか。せっかくついた読書の習慣を逃す手はない。腰を据え、時間をかけてじっくり読む長編、編毎に新たな世界を味わうことができる短編、次はどんな本にしようかと選ぶ時間も読書の楽しみの一つだろう。編集部おすすめの名著を紹介する。
『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』
インターネット技術の進歩によって、自宅やカフェで仕事ができるようになり、ワークスタイルはもちろん、どこで、どのように暮らすかという選択肢・価値観もまた大きく変わってきている。同書のタイトルとなっている「リビング・シフト」は、そのパラダイム(時代や分野において支配的規範となる、ものの見方やとらえ方のこと)の変化を指すもので、近年地方へ移住する人々が増えてきているという。
リビング・シフトの背景にはインターネットの進歩だけではなく、現代日本社会の状況も大きく影響している。
特に注目したいのが、生活の豊かさを何によって計るのか、その基準が変化してきているという点だ。東日本大震災をきっかけに、“もの”を所有しない価値観が広がり、“もの”に代わって「人と人のつながり」や「美しい自然や文化」により価値を見出す人たちが増えている。新しい指標のヒントは“地域”にあり、同書ではそれらを「地域社会資本」「地域環境資本」と呼んでいる。
今回のコロナ禍により、テレワークや在宅勤務などへの転換で、働き方が変わった人は多いはずだ。
「いつかは地方に移住してみたい」と考えている人も、そうでない人も、どこで働き、どのように暮らしていくかを考えるきっかけになればと思う。
書誌情報
『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』
著者:柳澤大輔
発売日:2020年3月18日
発行:KADOKAWA