うつ病の原因遺伝子 ヒトヘルペスウイルスから発見
東京慈恵会医科大学は16日、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)から、うつ病の原因遺伝子を発見したと発表した。論文は5月21日のiScience誌(Cell Press)に掲載された。
うつ病の疾患の原因は明らかにされておらず、症状を緩和する対症療法によって治療が行われているのが普通だ。これまで大規模な遺伝子研究が行われたにも関わらず、ヒト遺伝子の中にはうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されてこなかった。
同大学ウイルス学講座の近藤一博教授らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に研究対象を広げ、ほとんどすべてのヒトに潜伏感染しているHHV-6の遺伝子SITH-1を同定。血清中の抗体検査によって、SITH-1の発現を検出する方法を開発し、健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を調べたところ、うつ病患者は健常人に比べてSITH-1発現量が非常に多いことがわかった。動物実験でSITH-1の機能を調べたところ、SITH-1は脳のストレス応答を亢進させることで、うつ病を発症させる作用があることが考えられた。またSITH-1は、ヒトを12.2倍うつ病になりやすくさせ、79.8%のうつ病患者が影響を受けているという、非常に影響の大きい遺伝子であることが分かった。
今回の研究結果から、SITH-1抗体検査によって、うつ病の早期発見や、うつ病になりやすいかどうかの予測ができる可能性があるという。これまで同研究チームは、疲労によってSITH-1発現の元となるHHV-6が唾液中で増加することを発見しており、SITH-1が疲労とうつ病をつなぐ鍵になるかもしれないとしている。
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