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「台風は森林崩壊を引き起こす」北大などがメカニズムを解明

「台風は森林崩壊を引き起こす」 北大などがメカニズムを解明

北海道大学大学院農学研究院の森本淳子准教授らの研究グループは15日、大雨が台風による森林崩壊リスクを増大させることを突き詰めたと発表した。崩壊のメカニズムを解明することで、今後台風に対応する森林管理に役立てられることが期待される。この研究成果は10日付でForest Ecology and Management誌に掲載された。

これまで強風による森林崩壊メカニズムについてはすでに多くの研究報告があったが、強風と大雨による森林崩壊メカニズムについては未解明な点が多く残されていた。北海道大学大学院農学研究院の森本淳子准教授、人間文化研究機構総合地球環境学研究所の饗庭 正寛特任助教、京都大学防災研究所の竹見哲也准教授及び大阪大学大学院工学研究科の松井孝典助教らの同研究グループは2016年8月下旬に北海道に上陸した3つの台風による道南325㎢における森林崩壊を対象に調査・解析を行った。

調査では現場で根返りと幹折れの状況を確認。解析では衛生画像で崩壊地を地図化し崩壊に関係しそうな気象・地形・森林の変数17個を全域で計算した。台風の進路や風速はシミュレーションにより再現し、これらを基に森林崩壊が発生しやすい場所を予測できるモデルを構築した。その結果、雨台風では、強風だけではなく大雨も森林崩壊を引き起こす要因であることが分かった。

尾根筋の森林や斜面方位と同じ方角(正面)から強風を受けた森林は、風当たりが強いため崩壊しやすくなる。さらに、降雨量が多いほど崩壊しやすくなるが、その感度は優先樹種によって異なることが判明した。

感度が高い樹種は感度が低い樹種に比べて側根密度が低い傾向があり、崩壊メカニズムと深く関連している可能性がある。したがって、雨耐風に対する森林管理上の適応策として、尾根筋への造林を避ける、側根密度の高い樹種で造林することがあげられる。

今後は仮説を実験やモデリングなどで検証していき、気候変動に対する森林管理の適応策の構築に役立てられることが期待される。

(写真はイメージ)