生物の性別はどのように決まるのか? マウスの真の性決定因子同定
大阪大学大学院生命機能研究科立花教授らの研究グループは、マウスの性決定因子Sry遺伝子の構造がこれまで考えられていたものと異なることを明らかにし、真の性決定因子の姿であるSRY-Tを同定した。研究内容は2日、米国科学誌「Science」に掲載された。
生物の性別がどのように決まるのかは古代ギリシアから議論されており、生物学の大きなテーマの一つになっている。ほ乳類の性は性染色体の組み合わせで決まることが知られており、ほとんどの哺乳類はXX型がメス、XY型がオスになる。これは、Y染色体に存在するSryという遺伝子の働きによるものであり、ほとんどのほ乳類で共通した仕組みであることが広く知られていた。
遺伝子はexon(エキソン)と呼ばれる配列から構成されるが、単一のエキソンから構成される遺伝子と、複数のエキソンから構成される遺伝子の2つに分類される。Sryは前者の単一エキソン遺伝子であると考えられてきたが、研究グループは今回の研究で、マウスSryの2番目のエキソンの存在を確認した。
そこで、今まで知られていたエキソンのみ(単一エキソン)で構成される遺伝子(single exon encoded SRY, SRY-S)と、1番目と今回見つかった2番目のエキソンで構成される遺伝子(Two-exon SRY, SRY-T)を区別して、性決定時期における両者の働きを詳しく調べることにした。
実験的にSRY-Sのみが機能するオスのマウスを作製したところ、マウスはメスへと性転換し、また逆にSRY-Tを機能させたメスのマウスはオスへと性転換することが確認された。これらの実験結果から、SRY-Tが生体内で必要かつ十分な性決定因子であることを研究グループは立証した。
さらに同研究は、性決定遺伝子の進化に関しても、これまでに考えられていた仮説に一石を投じるものであり、今後、ほ乳類の性決定の仕組みのさらなる解明と、性決定遺伝子の進化の理解につながることが期待される。
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