【コラム】核兵器禁止条約発効 原爆のない未来へ一歩
1月22日、核兵器禁止条約が発効され、国際法上、核兵器が違法となった。条約の発効が決まった2020年10月、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、発表した声明で次のように述べた。「条約発効は、これを強く求めてきた核爆発と核実験の生存者たちに報いるものです。核兵器禁止条約の発効は、核兵器の使用が壊滅的な人道的被害をもたらすことに対する関心を集めるため、これまで積み重ねられた全世界的な運動の成果です」
条約発効のニュースを目にし、長崎で平和活動を行っている山岸ゆか(仮名)さんに連絡をとった。山岸さんとは2017年に長崎を訪れた際、原爆関連の遺跡を案内いただいた時からの付き合いになる。
現地の様子を聞くと、「被爆者の方や平和活動に打ち込まれている方は皆さん、本当に喜んでいます」と、興奮気味に語ってくれた。
今年1月9日の月命日には、降雪で交通機関が麻痺していたにも関わらず、長崎市の平和公園にある平和祈念像の前には、被爆者や活動支援者など多くの人が集まっていたそうだ。条約発効を祝い、核兵器に喩えて、膨らませた風船を割るのではなく萎ませていくパフォーマンスなども行われたという。
山岸さんは「世界52の国と地域が加入または批准からスタートした原石のような条約だが、これが今後さらに磨かれて、より効力を持って、日本を含めた多くの国を変えていってほしい」と話した。
以前、長崎を訪れた際、長崎という町自体が原爆と共にあり、現在も原爆の痕跡がそのまま残されていることに衝撃を受けた。悲しみの記憶を決して忘れてはいけないこと、語り継いでいく必要性があるのだ。
今回発効した条約は「原石」ではあるが、被爆者の方々をはじめ、多くの市民の努力の結実といえるだろう。原爆の酷さを語り継ぐ悲しみの日々から、1月22日を境に、原爆のない未来の世界を考えることができる日々へ、時代は変わり始めている。
(写真はイメージ)