令和時代の子どもと大人の教育 時代に即したイノベーションを
NEWS SALTでは4月24日、オンラインセミナー「令和時代の子どもと大人の教育」を開催した。講師は、教育ライターの田中陽子氏。急速に進むICT教育の実態や、学校教育が抱える問題点について、解説していただいた。
OECDの国際的な学習到達度に関する調査によると、1週間のうち教室の授業でデジタル機器を利用する時間は、OECD加盟国のうち日本が一番短いという結果が出ている。教育のデジタル化の遅れが顕著な中、コロナ禍が後押しし、「GIGAスクール構想」が急ピッチで進められた。これは、全国の公立小中学校の児童・生徒全員に、PCやタブレット端末を配布し、学校のネットワーク環境を整備する取り組みだ。
授業でICT端末を使用することで、協働的な学びや、ドリルアプリ等での個別最適化された学びを実現したり、不登校の子どもがオンライン学習に取り組むなど、多様性の包摂につながることが期待される。一方、教員の年代やITリテラシーによって、端末を活用した授業の質に差が生じている現状がある。研修の時間を十分設けるなどして、時代に即した授業形態が柔軟に取り入れられることが望まれる。
また、新しい学習指導要領に明記されている「主体的、対話的で深い学び」も、近年の教育の特徴と言える。旧来型の知識詰め込み型の学習から、子どもたちが主体的に、互いに話し合いながら深く考えることで、思考力や表現力を養う学びに移行してきている。「アクティブ・ラーニング」と呼ばれ、地域の課題をプログラミングを用いて解決していく授業の事例が紹介された。こうした学びでは、教員が児童・生徒に一方的に教えるのではなく、各自の学びに伴走してコーチングをしたり、ファシリテーションする力が求められ、教員の役割も変わりつつある。
大人の学びとしては、「リカレント教育(学び直し)」が広がるようになった。社会が急速に変化する中、身につけた知識も早いスピードで陳腐化していく。これまで重要視されてきた最終学歴ではなく、「最新学習歴」が求められる、学び続ける社会が到来している。
参加者からは、「学校でタブレットが普及してデジタル化が進めば、知識として覚えることよりも、情報を探して活用する能力が求められる。漢字の書き順などは覚える必要がなくなるのでは?」などの意見が上がった。また、「教育をより良くしていくためには政府と教育現場だけではなく、企業や様々な人材が関わりながら共に作っていくことができるように、学校も社会も変わっていく必要があると感じた」といった感想が寄せられた。
(写真はイメージ)