日本人はアルコールに弱い体質に「進化」 ゲノム解析で明らかに

[書評]生命科学の基礎講義「LIFE SCIENCE」 細胞で長生きと老化の全てがわかる

本書の著者は、ノーベル生理学・医学賞の受賞者の共同研究者という生命科学の権威である吉森保氏。本書で吉森氏は「細胞を知れば病気のことが、長生きと老化の全てがわかる」とし、生命活動の基礎である細胞の成り立ちについて学ぶことで、「病気のなぜ?」や「コロナウイルスのなぜ?」が、そして寿命を延ばすコツがわかると語っている。

本書は、1章で細胞の働きから生命活動を理解するための科学的思考を認識させる。さらに、細胞の中の物を回収し分解してリサイクルする「オートファジー」の働きによって細胞がおかしくなるかどうかが変わり、それが様々な病気を発症するか否か、寿命を延ばせるか否かという議論展開になっていて、まさに1章での科学的思考そのものを2章から5章で実体験させられる。

因果関係の検証には遺伝子操作されたマウス実験がベースとなっているものが多いが、原因と結果を検証なしに結びつけるだけのいわゆる「エセ科学」ではなく、仮説と検証の繰り返しで得られた研究結果がまとめらており信頼性も高いといえよう。

総351ページに及ぶ専門書かのように思われるが、数式や化学反応式は登場せず、基礎から先端科学までわかりやすく網羅されている。    

筆者は最後に、オートファジーの活性化には「腹八分で、運動する 。脂っこい食事を避ける。これにつきます」と締めくくっている。 本書のボリュームの割には意外な結論だが、結局のところ昔から健康に良いと言われていることはオートファジーにも良いのだそうだ。

『LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』

著者:吉森保
発行日:20201217
発行:日経BP 日本経済新聞出版

(冒頭の写真はイメージ)