東京大学、産官学共同の量子コンピュータ実用化のための協議会設立

アルミニウムと鉄の合金で水素が蓄えられることを発見 東北大学など

量子科学技術研究開発機構、東北大学、高エネルギー加速器研究機構の研究者による研究グループは29日、資源量が豊富なアルミニウムと鉄を組合せた合金で水素が蓄えられることを発見した。従来のように希少な元素(レアメタル)を含むことなく、コンパクトに水素を蓄えられる水素吸蔵合金ができる可能性を示した。研究の成果は290時(日本時間)に学術雑誌『Materials & Design』にオンライン掲載された。

研究グループのメンバーは、量子科学技術研究開発機構(QST)量子ビーム科学部門関西光科学研究所の齋藤寛之グループリーダー、東北大学の佐藤豊人助教(現 芝浦工業大学)、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の池田一貴特別准教授ら。

水素エネルギーは使用後に水となり二酸化炭素を排出せず、また様々な一次エネルギーからの変換も可能なため、温暖化対策とエネルギー安全保障の問題を同時に克服する切り札と考えられている次世代クリーンエネルギーだ。ただし、水素は大気圧・常温の条件では気体であり、かさばることから、「どのように水素を蓄えるか?」という輸送・貯蔵が課題となっていた。

その常温・大気圧化では気体である水素を蓄える技術の一つが水素吸蔵合金である。気体の状態で水素分子間の平均距離は33Å(オングストローム)であるが、水素吸蔵合金中では水素原子間の距離は2Åであり、1000分の1程度にコンパクトに水素を蓄えることが可能になる。

従来の水素吸蔵合金の開発では、水素と反応しやすい金属と反応しにくい金属(難水素化金属)を組合せるという定石があり、水素と反応しやすい金属はレアメタルと呼ばれる希少な金属から選ばれることが典型だった。レアメタルは資源量が少なく価格も高いという問題がある。

研究グループは定石に疑問を呈し、難水素化金属同士の組合せで水素吸蔵合金を作れないかを検討した。そして2013年にアルミニウムと銅の合金で水素貯蔵が可能であることを示した。さらに資源量が豊富なアルミニウムと鉄の合金に着目し、高温高圧の水素と反応させることにより新しい金属水素化物(水素を吸蔵した合金)の開発に成功。この合金で吸蔵できる水素の量はこれまでのレアメタルを使った水素吸蔵合金と同等のレベルだった。

さらに合金の構造は従来の水素吸蔵合金の原子の並び方に当てはまらない新しい並び方であることがわかった。また、合金の表面の性質を変えることでより低い圧力でも水素を取り込めることがわかった。

この研究では従来の定石に捉われない水素吸蔵合金開発の可能性を示し、新規材料探索の幅を飛躍的に広げることができたとしている。今後の研究により大気圧付近で水素を吸蔵する合金の開発が実現すれば、SDGs(持続可能な開発目標)の再生エネルギーの割合拡大への貢献が期待できるという。

 

従来の水素吸蔵合金による水素吸蔵とその課題、および、本成果のアルミニウム鉄合金

画像提供:量子科学技術研究開発機構(冒頭の写真はイメージ)