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[書評]41ヵ国の若者たちの訴え「気候変動に立ち向かう子どもたち」

人類史におけるここ数百年の急激な経済発展を背景に、地球温暖化が各地域の生活に影響を与える大きな問題となっている。1910年代にはその警告が発せられていたにもかかわらず、世界中の国が協力する枠組みである、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が最初に開催されたのは1995年、気温上昇を1.5℃まで抑えるという努力目標に合意したのは2015年のことだ。その後も二酸化炭素排出量は毎年増加し続けている。

2018年8月20日、15歳のグレタ・トゥーンベリは、スウェーデン国会議事堂前で座り込みを行った。当時その写真をソーシャルメディアに投稿したが、注目する人はほとんどいなかった。総選挙が行われるまでの21日間、このようにストライキを続ける中で、仲間が増え、ソーシャルメディアで拡散され、世界中の若者たちが、気候変動に反対するために立ち上がるようになった。2019年の国連気候変動サミットで、グレタはメディアに、世界中で気候変動の危機と闘っている他の若者達に注目するようにと呼び掛けた。

本書は、アジア、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、南極、オセアニアの41カ国60人の若者達の作文を通して、地球を救うために世界のあらゆる地域で闘っている、その訴えに触れることができる。彼ら彼女らは、身近な環境に、地球温暖化の影響が及んでいることを実感している。海でプラスチックごみを食べて死んでいる動物を目の当たりにし、海面上昇のために住んでいる故郷がなくなろうとしている。地球温暖化の問題は、これからの未来を生きる若者達には、今すぐに対策をしなくてはならない、現実的で切実な問題なのだ。

彼らは、ストローを再生可能な素材に変えるよう働きかけたり、サッカーでゴールを決めるごとに木を一本植える活動をしたり、環境にやさしい素材の研究をしたり、自分達が社会でできることを模索し行い、発信をしている。金曜日に学校を休んで抗議活動をすることで権力に目をつけられたり、就職で有利になるためにやっているのではないかと友人に言われたり……といった様々な困難と闘いながら。

日本でも、近年豪雨などの災害は増えているが、残念ながら日本に住む若者の作文はない。本格的なプラスチックごみ対策などが始まっているが、それだけではなく、私達が日常安価に購入している製品が作られる過程で、環境や人々に負荷を与えていることも理解し、自身の問題として賢い選択をしていかなければならない。社会の認識が変わり、個人の生活が変わり、地球の各地域の若者達が安心して暮らしていける世界になることを願う。

(冒頭の写真はイメージ)

『気候変動に立ちむかう子どもたち 世界の若者60人の作文集』
編者:アクシャート・ラーティ
発行日:2021年3月29日
発行:太田出版