ヒアリのコロニーを大阪港で確認、定着が日常生活に及ぼす危険性
環境省は28日、8月に大阪港で確認された特定外来生物ヒアリに対する追加調査および防除を実施したと発表した。9月22日の追加調査において、隣接する個所で一定規模のコロニーを形成していて複数の女王アリも確認された。ヒアリの確認は、2017年6月の国内初確認以来、17都道府県、計78事例になる。
今回の事例では、8月23日に大阪港の港湾調査で、調査事業者がコンテナヤード敷地境界でヒアリと疑わしいアリ300個体程度が側溝の継ぎ目に出入りしていることを確認。8月25日にヒアリであると同定された。その後の調査で9月22日、それまで工事で立ち入りができずその日から調査が実施できるようになった場所で、新たに1000個体以上の働きアリとその土中への出入りが確認された。専門家の現地調査によって有翅女王アリ3匹、無翅女王アリ1匹を確認した。
同省では、確認地点の周辺を徹底して防除し、周辺調査を継続していく。また、事業者などに疑わしいアリを発見した場合に関係機関に速やかに連絡して、取り扱いに相談するように呼び掛けている。
ヒアリ定着による懸念点
ヒアリは赤茶色の小型のアリで、腹部は濃く黒っぽい茶色。原産地は南米で、亜熱帯から暖温帯に生息している。体長は2.5~6mmと個体によって大きさにばらつきがあり、土でアリ塚を作って住む。漢字で「火蟻」と表され、刺されるとやけどのような激しい痛みが生じる。好んで巣を作るのは日当たりのよい開放的な場所で、公園、芝生・緑地、水辺、畑地など。貨物などに紛れて移動したことで、中国や台湾など環太平洋諸国で分布が急速に広がっている。いったん繁殖してしまうと根絶は困難で、定着初期に徹底した対処を行ったニュージーランドを除いて成功していない。
ヒアリの毒そのものによって死に至ることはないが、懸念されるのは、アナフィラキシーショックという強いアレルギー反応の症状を起こすことがある点だ。ヒアリが定着した場合には公園や河川敷でのレジャー時の安全面や、ガーデニングや家庭菜園にも支障が出るとされている。
ヒアリは農作物をかじって品質や収量を低下させたり、家畜や作業者を襲ったりする。さらに、電気設備に入り込みやすい特徴を持ち、工場や電力プラント、空港などの電気機器に障害を与える。経済損失の評価事例では、全米で年間60億ドル(約6700億円)と莫大な金額が見積もられている。
現在の日本のヒアリの状況
今回、日本国内で大きな巣が形成されて女王アリの存在まで確認されたのは、2021年9月の名古屋港の事例以来となる。
今回の事例では、コンテナヤードではなくて隣接する緑地で一定規模のコロニーが形成されていた点、新女王アリが地上を歩いていることを確認された点から、すでに新たな営巣がされていることを否定できない状況にある。
今のところ、日常生活でヒアリと遭遇することはほぼないが、ヒアリの定着をここで食い止めるために一層の対策が望まれる。
画像提供:環境省
名古屋港に続き横浜港でもヒアリ確認
特定外来生物ヒアリ、尼崎に次いで神戸で確認