JAXAが13年ぶりに日本人宇宙飛行士候補者の募集を実施
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は19日、日本人宇宙飛行士の活動の場が国際宇宙ステーション(ISS)や日本実験棟「きぼう」、そして月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面に拡がることを想定し、2008年の前回募集から13年ぶりに、新たな宇宙飛行士の候補者を若干名募集すると発表した。
応募受付期間は2021年12月20日から2022年3月4日までで、最終選抜結果の発表は2023年2月頃を予定している。
2020年10月、「新たな日本人宇宙飛行士候補者の募集を開始すること」と「今後5年に1回程度の頻度で募集を行うこと」を文部科学大臣が発表。これを受けて、JAXAでは応募条件等への意見や募集・選抜、基礎訓練に活用できる民間のアイデア等の募集を2021年1月20日から3月19日まで実施した。
募集により集まったアイデアから、JAXAは「応募条件の緩和」「女性応募奨励のための広報施策の展開」「働き方の多様性」「選考過程の透明性」「落選者への対応」の5点(※1)を今回の宇宙飛行士候補者募集に反映することとした。
こうして提示された今回の応募資格は以下の通り。
(1)2021年度末(2022年3月末)の時点で、3年以上の実務経験を有すること。(修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす。)
(2)以下の医学的特性を有すること。
身長 : 149.5~190.5㎝
視力 : 遠距離視力 両眼とも矯正視力1.0以上
色覚 : 正常(石原式による)
聴力 : 正常(背後2mの距離で普通の会話可能)
JAXAでは「未来を創造する宇宙飛行士の重要な役割を通じて、人類・社会への貢献を志す多様な方々の応募をお待ちしております」と呼び掛けている。応募するには受付期間中にエントリー専用のウェブサイトより必要書類を提出することで可能だ。2022年4月に書類選抜の結果が通知され、5月に英語試験があり、英語試験合格者に対して選抜試験が実施される。そして7月頃から第一次選抜が開始される予定だ。また募集要項など各種情報は、以下の宇宙飛行士候補者募集特設サイトにて順次案内される。
https://astro-mission.jaxa.jp/astro_selection/
【参照】※1
(1)応募条件の緩和・・・学歴及び専門分野の条件緩和に関する意見が多く寄せられたことを踏まえ、今回は学歴及び専門分野は応募条件とはせず、宇宙飛行士候補者に必要なこれらの能力は選抜試験において評価(大学の教養課程相当の一般教養試験と、国家公務員採用総合職試験相当のSTEM分野の試験を実施)することとした。これに加え、訓練期間中に充足できる条件(泳力、自動車免許保有)は応募資格から除外するなど、応募条件を全体的に見直した。
(2)女性応募奨励のための広報施策の展開・・・日本人女性宇宙飛行士が不在である状況ならびに女性飛行士の採用を求める意見を踏まえ、ポジティブ・アクション(格差解消を目的とするため、男女雇用機会均等法の違反とならない女性枠設置等の優遇措置)の適用も検討したが、若干名と採用人数が少ない状況を踏まえ、女性枠は設けず、募集における女性の応募奨励のための各種広報関連施策を行うこととした。
(3)働き方の多様性・・・訓練期間や訓練スケジュール等の養成計画との関係、所属元組織との関係等、様々な点を検討した結果、導入することが難しいとの結論に至り、活用を見合わせた。具体的には、訓練の従事割合がほぼ100%となり、国内外含め他の宇宙飛行士と同じ計画で訓練することも多く、海外で訓練を行うこともあり、所属元と掛け持ちで業務をこなすということは難しいと判断した。次回の募集に向けて検討は継続する。
(4)選考過程の透明性・・・選抜プロセスについては、応募者等の個人情報等に十分に配慮しつつ、公開可能な部分は積極的に公開するなど、透明性の確保に努めたい。
(5)落選者への対応・・・受験者に対する何らかのフィードバックを検討中である。
画像提供:JAXA