リチウムイオン電池の電解液の着火反応を解明 東北大

リチウムイオン電池が発火する仕組みを解明 安全な運用へ期待 東北大

東北大学は1日、リチウムイオン電池の電解液の着火反応のモデルを世界で初めて構築し、その詳細を解明したと発表した。これによって発火しない安全なリチウムイオン電池の開発や運用が期待できる。

リチウムイオン電池はモバイル電子機器のバッテリーとして、また、再生可能エネルギーの短期間貯蔵のために昨今利用が急激に拡大している。その一方で、リチウムイオン電池の発火事故が問題となっている。発火の原因は電解液として有機溶媒を用いるためだが、その着火の過程は今まで明らかになっていなかった。

東北大学流体科学研究所の中村寿准教授・丸田薫教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の電解液の主成分である炭酸エステルの着火過程に着目。独自に開発した特殊な装置(温度分布制御マイクロフローリアクタ)を用いて実験したところ、エチル基(CH2-CH3)を持つ炭酸エステルは熱分解反応が低温で進行するため、メチル基(CH3)のみの炭酸エステルより着火しやすいことがわかった。

着火のしやすさの指標として従来は引火点が用いられてきたが、これは化学反応のしやすさだけでなく蒸散のしやすさにも依存する。エチル基を持つ炭酸エステルはメチル基のみの炭酸エステルより蒸発しにくいため、引火点の指標では着火しにくいことになるが、化学反応の観点では着火しやすいことになる。この研究により化学反応と蒸散の特性を切り分けて着火性を評価し、それぞれの特性に応じた発火対策を検討できるようになった。

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20211201_02web_Li.pdf

さらに、炭酸エステルの統合燃焼反応モデルを世界で初めて構築し、実験結果を正確に予測可能であることを示した。これらにより、リチウムイオン電池の電解液主成分の正確な着火限界予測が可能となり、発火しない安全なリチウムイオン電池の開発や運用が期待できる。

この研究は、国際学術誌「Combustion and Flame」にオンライン掲載された。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)