父親の家事・育児参加のために抑えるべき勤務時間が明らかに
政府が目標として定めている「6歳未満の子どもをもつ男性の1日あたりの家事・育児時間を150分にすること」を達成するためには、父親の1日あたりの「仕事関連時間」を9.5時間未満に留める必要があることが国立成育医療研究センターの調査によって明らかになった。今回示された数値が、働き方改革やリモートワークなどによる通勤時間の短縮など、父親の家事・育児時間の確保につながる社会的な制度や取り組みを推進する手がかりとなることが期待される。
研究グループは、国の基幹統計調査として総務省が実施している「社会生活基本調査」の2016年のデータを使って、父親の「仕事のある日」の1日の生活時間を分析した。1日の生活時間を仕事や通勤に費やす「仕事関連時間」、「家事・育児関連時間」、睡眠や食事等に費やす「一次活動時間」、通勤以外の移動や休養等に充てる「休息・その他の時間」の4つのカテゴリーに分類し、仕事関連時間の長さごとにぞれぞれのグループの1日の生活時間の使い方を分析した。
その結果、本研究のデータおよび先行研究から「一次活動時間」は10時間、「休息・その他の時間」は2時間と推計され、1日24時間からそれらを差し引くと、150分(2.5時間)の「家事・育児関連時間」を確保するためには「仕事関連時間」を9.5時間未満にする必要があることが明らかになった。
今回の分析結果から、子どもを持つ父親が家事・育児をする時間を確保するための具体的な仕事関連時間の目安が示された。しかし実際は、未就学児の子どもをもつ父親の69%は仕事関連時間が10時間以上であり、36%は12時間以上であることから、まだまだ「理想と現実」の差が大きいことも明らかになった。父親が家事・育児を行うことは、子育てをしやすい社会、女性の社会進出、少子化の抑止など、さまざまな現代社会の課題に影響を及ぼすことが期待されるため、社会的な制度・取り組みの導入はもちろんのこと、当事者以外の意識の変化も同時に進むことが望まれる。
この研究成果は、国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部の大塚美耶子研究員、竹原健二部長らによって、2021年12月22日に「厚生の指標」にて発表された。
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