東北大、ソフトバンクGNSS観測網を用いた地殻変動の観測を実施
東北大学は10日、ソフトバンクが運用する全球測位衛星システム(GNSS)観測網を用いて地殻変動の様子を高い空間分解能および十分な精度で把握できることを初めて実証したと発表した。これにより大きな地震の震源像の把握や、内陸活断層における地震発生の長期評価など、防災・減災に貢献できる。
全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System, GNSS)は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の衛星測位システムの総称。上空を周回するGNSSから送信される電波を利用して、受信点の位置を正確に把握することができる。地面に固定された受信点であれば、時間間隔をおいて計測することでその間に生じた地殻変動を三次元的に把握できる。
地震や火山活動にともなう地殻変動を高い精度で把握することは、現象の理解のためだけでなく、それらの発生予測を実現するためにも非常に重要である。日本では国土地理院が運用する全国1300点超のGNSS観測網(電子基準点)により、高い精度で地殻変動場が調べられている。
その一方で、2019年11月よりソフトバンクによる測位サービスの高度化を目的とした超多点(全国3300点超)の独自GNSS観測網(ソフトバンク独自基準点)の運用が開始された。
東北大学大学院理学研究科の太田雄策准教授らの研究グループは、ソフトバンク独自基準点によるGNSS観測データの提供を受け、解析を行うことで、同観測網による地殻変動場の把握のための精度検証を実施した。
評価は、長期的な地殻変動場として2020年9月~2021年3月の宮城県および、地震にともなう地殻変動場として2021年2月13日福島沖地震(M7.3)の二種類を対象とした。
長期的な地殻変動場では、ソフトバンク独自基準点と国土地理院の電子基準点が調和的な変動を示していた。福島沖地震では、福島県の沿岸を中心として西南西の2cm程度の水平変動が確認され、ソフトバンク独自基準点が長期的な地殻変動だけではなく、地震時変位も正確に捉えられることが明らかになった。
同グループは、今回の研究により、ソフトバンク独自基準点が、大きな地震の震源像の把握や内陸活断層におけるひずみ蓄積の推定による地震発生の長期評価の高度化に貢献しうることを示され、国土地理院の電子基準点を補完する重要なインフラとして防災・減災への貢献が期待できるとした。またGNSSは地殻変動現象だけではなく、対流圏内の水蒸気量の把握など幅広い地球科学分野での活用が進んでおり、ソフトバンク独自基準点はそれらの分野にも役立つことが期待されるという。
画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)