マイクロカプセル化したわさび成分シートがヒアリの侵入を防除

兵庫県立大学は27日、天然由来の安全な防虫・殺菌効果を持つわさび成分が、コンテナ貨物輸送において特定外来生物ヒアリの忌避剤として有効活用できることを明らかにしたと発表した。この研究成果は3月28日に国際科学誌「Applied Entomology and Zoology」のオンライン版に掲載された。

特定外来生物ヒアリは2017年5月に兵庫県尼崎市と神戸港で国内初侵入が確認され、2022年4月時点でその確認事例は18都道府県、84事例となっている。その多くは中国からのコンテナ輸入によるものであり、ヒアリのコンテナ貨物への侵入を防ぐ防除技術の確立が強く望まれていた。

わさびの香り成分が天然由来の安全な化合物であり、強力な防虫効果を持つことは知られていたが、その高い揮発性と強い刺激性のためにコンテナ輸送で使用されることはなかった。最近になり細孔を有する樹脂でわさび成分をマイクロカプセル化する技術が確立されて、揮発量と徐放性のコントロールが可能となった。

橋本佳明 兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員らの研究グループは、2019年にヒアリが好む匂いを発する餌を入れたプラスチック管の中にわさびシートを入れることで、揮発したわさび成分の存在下でヒアリの侵入を阻止できることを確かめた。そこで今回は、侵入口として小さな穴を開けた段ボール箱にヒアリ誘引のため匂いが強いエサとマイクロカプセル化わさびシートを入れ、忌避効果の検証を行った。実験の結果、マイクロカプセル化わさびシートを設置していない段ボール箱では40分後の箱内に平均で70匹のヒアリ侵入が見られたが、わさびシートを設置した箱では平均で20匹ほどだった。さらに段ボール箱にプラスチック製の箱カバーをかぶせた場合では、ヒアリの侵入をほぼ防ぐことができた。

コンテナ輸送では水濡れ事故を防ぐために、段ボール貨物の多くをプラスチック製カバーで覆っている。このカバーとマイクロカプセル化わさび成分シートを併用することで、ヒアリ忌避効果が得られることがわかった。この成果によって、ヒアリ侵入前防除技術としてのマイクロカプセル化わさび成分の実装化が加速することが期待されるとしている。

ヒアリの巣の上に設置した段ボール箱

画像提供:兵庫県立大学(冒頭の写真はイメージ)

参考記事

ヒアリのコロニーを大阪港で確認、定着が日常生活に及ぼす危険性(2021.10.07)