都市における屋上太陽光発電と電気自動車の普及が脱炭素化に有効 東北大が韓国で試算

都市における屋上太陽光発電とEV車の効果を韓国で試算 東北大など

東北大学は3日、米国パデュー大学、韓国ソウル大学の研究者と共同で行った研究により、韓国のいくつかの都市と地域において屋上太陽光発電と電気自動車(EV)の組合せが脱炭素に有効だということを示したと発表した。研究の成果は国際科学誌「Applied Energy(電子版)」に掲載された。

2050年までに二酸化炭素の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するために、経済性の高い脱炭素化手法の開発が望まれている。そのために価格の下落が著しい太陽光発電(PV)と世界で急速に普及が進む電気自動車(EV)の活用が有効と考えられている。

東北大学環境科学研究科の小端准教授の研究グループは、屋根上PVとEVを用いて都市レベルでの脱炭素化に関する研究を進めてきた。これまでの研究では、屋上PVを都市の建物の屋根の最大70%に敷設し、全ての自動車をEVとし蓄電池として用いることで、都市の脱炭素化が低コストで大幅なCO2排出削減につながることを示してきた。例えば、日本の9つの都市(東京都区部、札幌市、仙台市、郡山市、新潟市、川崎市、京都市、岡山市、広島市)において、PV+EVシステムによって都市の53~95%の電力需要をまかなうことができることがわかっている。これによって自動車と電力消費からのCO2排出の54~95%の削減につながる。さらにPVとEVの価格を2030年で想定すると、26~41%のエネルギー経費の削減につながる。

今回の研究では、米国パデュー大学、韓国ソウル大学との共同で、韓国のソウル、インチョン、テジョン、セジョン、チェジュ島での分析を行った。韓国の都市は、日本に比べてマンション等の共同住宅が多く、一人当たりの屋根面積が比較的小さいため、日本に比べて若干PV+EVシステムの効率は小さくなるものの、自動車と電力消費からのCO2排出を最大86%減らし、最大51%のエネルギー経費の節約につながった。ソウル市でも最大49%のCO2削減につながり、戸建て住宅が多いチェジュ島では最大86%のCO2排出削減につながった。

図1 分析を行った韓国の5つの都市と地域。

分析を行った韓国の5つの都市と地域。

日本と韓国は共に世界的な自動車・電機メーカーを有し、新しいPV+EVを基盤とした分散型電源システムを構築する能力がある。今後の都市の脱炭素化の構想の実現に向けて協力が求められるだろう。世界的な課題であるカーボンニュートラルの実現に向けて、国を超えた技術協力の力が期待される。

(画像提供:東北大、冒頭の写真はイメージ)