コーヒー粕と茶殻から低コストで過酸化水素を生産 東京理科大
東京理科大学は16日、コーヒー粕と茶殻から化学工業などにおいて重要な物質である過酸化水素を生産することに成功したと発表した。さらに、生成した過酸化水素を生体触媒と組み合わせることで、有用化合物を合成することにも成功した。この研究成果は1日に米国化学会発行の学術誌「ACS Omega」にオンライン掲載された。
コーヒーとお茶は国内で大量に消費されていて、コーヒー粕と茶殻は廃棄物となっている。近年はそれらが未利用のバイオマス資源(生物由来の資源)として認識されるようになって、用途の開発が研究されるようになった。
東京理科大学理工学部応用生物科学科の古屋俊樹准教授らの研究グループは、コーヒーとお茶に豊富に含まれているポリフェノールに着目した。ポリフェノールは酸素と反応して過酸化酸素を生じさせることができる。
過酸化水素は化学工業で不可欠なだけでなく、最近ではエネルギーの貯蔵や輸送に用いるエネルギーキャリヤとしての用途も検討されている。工業的には主にアントラキノン法という化学プロセスにより生産されているが、製造に有機溶剤を使用することや多大なエネルギー消費を伴うことが課題となっている。
同グループは、コーヒー粕と茶殻に含まれるポリフェノールから過酸化水素を生産することを試みた。実験には市販のコーヒー豆と茶葉からコーヒーとお茶を入れた後に残存するコーヒー粕と茶殻を使用。これらをそれぞれ純水に添加して振とう(激しく揺り動かすこと)したところ、少量の過酸化水素が検出された。一方、リン酸緩衝液に添加して振とうしたところ、生成量が大幅に増加した。
さらに、生成した過酸化水素から生体触媒である酵素を用いて物質変換するバイオプロセスへの応用も試みた。酵素として枯草菌由来のペルオキシゲナーゼCYP152A1を使用し、医薬品原料等として有用なスチレンオキシドの合成に成功した。
同グループによると、開発した技術は、廃棄物から低コストで過酸化水素を生産することが可能であり、生成した過酸化水素を生体触媒と組み合わせることで有用化合物のサステナブルな合成手法を提供することができるという。
まだ小スケールでの成果であり、生成量等に課題はあることから、今後は、反応条件などを詳細に検討し、過酸化水素およびそれを利用した有用化合物の効率的な生産プロセスの開発を目指すとしている。
画像提供:東京理科大