サンゴ再生の鍵は水深20mの中間水深か 琉球大学が解明
琉球大学は5日、白化で衰弱した浅場のサンゴ礁の回復において、水深20m程度の中間水域がサンゴの幼生の移植のために「飛び石」のように機能することを示したと発表した。この研究成果は国際誌「Scientific Reports」に掲載された。
近年は高温の水温に長く晒されたサンゴが衰弱し、死滅することもある白化という現象が起こることが多い。水深30mより深い深場のサンゴ礁は光量が弱く、夏季には浅場よりも水温が低い。そのため深場が白化からの避難地となり、浅場へのサンゴ類の幼生供給源になっているのではないかと期待されていたが、その確証は得られてなかった。
琉球大学熱帯生物圏研究センターの波利井佐紀准教授の研究チームは、これまでに沖縄瀬底島海域において、浅場では白化で局所的に死滅したトゲサンゴの群落を水深40mで発見している。今回、同研究チームは深場から浅場海域へトゲサンゴの幼体を移植して生残を調べるとともに、異なる水深を再現した室内飼育実験を行った。
野外移植実験では、水深3~5mに移植した幼体は移植1か月後に全て死亡した一方で、水深40m、20mでは6か月後に約10%の個体が生残していた。また、水深3~5mでも光を受けず陰になる定着基盤の下方向に移植した幼体はより長く生残した。
さらに異なる水深の光環境を再現した室内飼育実験を行なったところ、水深40m、20mの光条件では定着率はそれぞれ92%、75%だったが、水深10m、5mの光条件ではそれぞれ31%、0%となり、白化した個体も見られた。これより幼体は急激な強い光には順応できないことを示していると思われる。
これらの結果から、浅場のトゲサンゴの再生には水深20m程度の中間水深が「飛び石」の場として機能して、浅場サンゴ回復に貢献している可能性が示された。より浅場への移動には、幼体がさらに時間をかけて光環境に順応する必要があると考えられる。また、浅場でも岩影など光の弱い環境に定着すれば、再生につながることもわかった。
現在、サンゴ礁は気候変動による海水温の上昇により浅場のサンゴが白化、死滅してきているが、その回復には幼生の加入が鍵となっている。同研究チームによると、今回、深場海域からの幼生供給により回復力が高まる水深帯が示されたことにより、今後どのような海域を重点的に守っていくかなどのサンゴ礁保全につながる基礎データとなることが期待されるとしている。
画像提供:琉球大学(冒頭の写真はイメージ)
参考記事
パラオで高水温・高CO2環境に打ち勝つサンゴ群集を発見 琉球大(2021.06.26)
サンゴ白化現象調査、白化率回復も生存サンゴの割合は半減 環境省(2017.07.26)