NASAが史上初の惑星防衛テスト「DARTミッション」に成功

NASAが史上初の惑星防衛テスト「DARTミッション」に成功 小惑星の衝突から地球を守る

アメリカ航空宇宙局(NASA)は米東部夏時間の9月26日午後7時14分(日本時間27日午前8時14分)、史上初となる惑星防衛技術のデモンストレーション「DART(ダブル・アステロイド・リダイレクション・テスト)ミッション」を実行し、成功したと発表した。これは、宇宙機を用いて地球に脅威を与えかねない小惑星や彗星の軌道を変えるための世界初のテストだ。

宇宙機DARTには「ディディモス偵察および光学航法用小惑星カメラ(DRACO)」が積まれており、オペレーターの支援なしで高度な自律誘導をすることができる。これにより、わずか570kgの箱型の宇宙機は宇宙空間を約10か月間飛行した後、直径780mの小惑星ディディモス(ギリシャ語で「双子」)を周回している直径160mの小惑星ディモルフォス(ギリシャ語で「2つの形」)まで最後の9万kmを自律誘導し、時速約2万2530kmで正確に衝突した。

その数秒前に取得されたDRACOの最終画像は、ディモルフォスの表面をクローズアップで詳細に明らかにしている。なお、今回標的となった二重小惑星は地球に脅威を与えるものではない。

今後、調査チームは地上の望遠鏡などを用いてディモルフォスを詳細に観測し、DARTの衝突がディディモスの周りのディモルフォスの軌道をどれだけ変えたかを確認するが、ディモルフォスの軌道が約1%、つまり約10分短縮されると予想されている。小惑星の軌道がどれだけ変わったかを正確に測定することは、このテストの主な目的の1つだ。

NASAのビル・ネルソン長官は、「DARTは、惑星防衛において前例のない成功を収めているが、それはまた、すべての人類に真の利益をもたらす一致した使命でもある。NASAは宇宙と私たちの故郷である惑星を研究すると同時に、その故郷を守ることにも取り組んでいる。この国際協力は、SF(科学的フィクション)を科学的事実に変え、地球を防御する1つの方法を示した」と述べた。

また、NASAの惑星防衛責任者であるリンドリー・ジョンソン氏は「DARTの成功は、小惑星による壊滅的な影響から地球を守るために必要不可欠なツールボックスに重要な追加を提供する。これは、この種の自然災害を防止するために、私たちがもはや無力ではないことを示している。次の惑星防衛ミッションである、NEOサーベイヤーによって残りの潜在的に危険な小惑星の発見を加速する能力と相まって、DARTの後継機は我々に必要なものを提供することができるだろう」と述べている。

なお、9月30日現在、GoogleとNASAの協力によりGoogleで「NASA DART」と検索すると、左側から宇宙機が飛んできて衝突し、ページ全体が傾く仕掛けが施されている。

写真提供:NASA