次世代蓄電池FSBの電極反応メカニズムを実証 京都大

京都大学は9月29日、現行のリチウムイオン電池を凌駕する可能性がある革新的な蓄電池である、フッ化物シャトル型蓄電池(FSB)の電極反応メカニズムを実証したと発表した。メカニズムが解明されたことにより、今後の性能向上への貢献が期待できる。

世界規模での持続可能な発展に向けて、蓄電池はクリーンなエネルギー社会を実現するためのキーテクノロジーとして位置づけられている。現行のリチウムイオン電池に取って代わる革新的な技術として期待されているのが、フッ化物シャトル型蓄電池(FSB)だ。これは正負極の電極反応として金属フッ化物の可逆的なフッ化/脱フッ化反応を、正極と負極の間の電荷キャリアとしてフッ化物イオン(F)およびフッ素を含む化合物フルオライドを用いて充放電する蓄電池。

フッ素を電荷キャリアとする電池の歴史は古いが、京都大学の研究グループによって室温で充放電可能な電解液を用いたFSBが2017年に初めて報告された。その後は様々な電解液が開発されるとともに、電極反応メカニズムの提案もされてきたが、実際にどのような反応が進行しているかは明らかでなかった。

同グループは、電極反応を行いながら原子間力顕微鏡(AFM)で電極-電解液界面構造の変化を測定した。測定対象としての電極反応メカニズムは「直接反応」型と「溶解-析出」型の二つを選び、モデル活性物質としてビスマス(Bi)と鉛(Pb)を用いた。「直接反応」型では、活物質である金属の表面がフッ化反応に伴って大きく体積膨張し亀裂(クラック)を形成、これが表面を伝わりつつまた深さ方向へも電解液が浸透して反応が進行した。「溶解-析出」型では、溶解した金属イオンとフッ化物イオンが反応して電極上に金属フッ化物の結晶核を形成し、その場所で大きく結晶成長した。

異なる反応メカニズム(直接フッ化反応型と溶解–析出反応型)による金属フッ化物生成過程

室温で動作する電解液系FSB開発の大きな課題は、正負両極での充放電反応の可逆性の向上だ。本研究によりどのような電極反応メカニズムを目指して活物質-電解液界面を設計すべきかが明確に示されるようになり、今後の電解液系FSBの性能向上への貢献が期待できるとしている。

フッ化物シャトル型蓄電池の動作原理

画像提供:京都大学(冒頭の写真はイメージ)