異種材料が接着する仕組みが明らかに マルチマテリアル化による環境負荷の低減に期待

異種材料が接着する仕組みが明らかに マルチマテリアル化による環境負荷の低減に期待

九州大学は13日、高分子鎖が接着界面で形成する機構を世界で初めて明らかにしたと発表した。この知見を用いた新しい接着技術を開発すれば、自動車を接着剤で組み立てることが可能になり、軽量化により二酸化炭素の低排出化につながることが期待される。

近年、複数の異種材料を適材適所で組合せるマルチマテリアル技術が注目されている。例えば非鉄金属と炭素繊維複合材料の組合せは、モビリティの軽量化を実現し、省エネルギー化によるカーボンニュートラルの促進に貢献できる。マルチマテリアル化を推進するためには、従来の接合技術を超えた信頼性ある接着技術の構築が必要とされる。しかし、これまでは接着剤の構成成分である高分子が被着体上でどのように界面を形成して接着するのかがわからず、その本質的なメカニズムが未解明となっていた。

九州大学、静岡大学などの研究グループは、高分子の異種材料表面への吸着挙動を明らかにするために、原子間力顕微鏡(AFM)観察と粗視化分子動力学(CGMD)シミュレーションを行った。長さの異なるデオキシリボ核酸(DNA)の固体材料上への吸着過程について、ひも状高分子鎖の固体表面への吸着機構、ならびに界面層の形成機構を視覚的に明らかにすることに初めて成功した。

異種材料が接着する仕組みが明らかに マルチマテリアル化による環境負荷の低減に期待

マルチマテリアルの設計指針に重要な高分子異種界面における吸着層形成過程を世界で初めて明らかに。

原子レベルで平滑なマイカ(雲母)に接触させた場合、高分子鎖が短い鎖では鎖が独立してランダムな位置に吸着し、長い鎖では周辺に空きスペースが多くあっても鎖同士が隣り合って吸着していた。これらより短い鎖では部分的に吸着した状態を経た後に一分子単独で吸着した状態に至り、長い鎖では部分吸着鎖が他の鎖を引っ掛けて結果的に複数分子が隣り合って吸着した共同吸着状態に至る傾向があるとわかった。また、短い鎖では吸着層がゆっくり形成されるのに対して、長い鎖では吸着層が比較的速く形成さることが明らかになった。短い鎖からなる吸着層には密なトレイン(ひも中で吸着した部分)構造があり、長い鎖からなる吸着層には多くのループ(ひも中で吸着していない浮いた部分)構造があった。

今回の研究でマルチマテリアルの接着部に存在する高分子鎖の構造特性が明らかになったことで、今後革新的な接着技術の創出が期待される。従来の接着技術では実現できなかった高分子マルチマテリアルの強靭化も可能となり、バイオ由来高分子ならば、役目を終えたデバイスを容易に土まで還すことも可能になる。環境に優しい高分子マルチマテリアルの創出が現実味を帯びている。

画像提供:九州大学(冒頭の写真はイメージ)