宇宙最初期の星「ファーストスター」の痕跡を発見
東京大学の鮫島寛明特任助教らの研究チームは、ビッグバンから7億年後にできたクエーサー(非常に遠方に存在している活動銀河核で、可視できるほど明るい天体)について鉄に対するマグネシウムの存在量比を推定したところ、非常に低い値であることを突き止めた。これは、宇宙で最初に光を放ち始めた一番星「ファーストスター」が爆発して宇宙空間に放出されたガスから生まれた第2世代の星の特徴と考えられ、間接的にではあるがファーストスターの痕跡を発見したものと言える。
ビッグバン宇宙論によれば、宇宙が膨張するにつれて密度と温度は急速に低下するため、できたばかりの宇宙には水素とヘリウムなど軽い元素しか存在しない。そのため、さまざまな天体で観測される重い元素は、大質量星の内部で合成され、超新星爆発によって宇宙空間に放出されたものと考えられる。したがって、宇宙における第1世代の星「ファーストスター」は、ほぼ水素とヘリウムのみであるはずだ。このファーストスターが太陽と同程度の質量であった場合、その寿命は銀河の年齢と同じくらい長く、現在でも生き残っていて見つかるはずだ。しかし、過去40年間の観測で水素とヘリウムのみの単一の星は、銀河のどこにも見つかっていない。
一方、ファーストスターが太陽の10倍以上の大質量星であった場合には短命で、銀河が形成されるずっと前に超新星爆発を起こすため、直接にその存在を観測することはできない。しかし、超新星爆発で放出されたガスから生まれた第2世代の星にファーストスターが存在した痕跡が見つかるはずだ。私たちの銀河系よりもはるかに遠方にあるクエーサーを調べれば、それだけ昔の星の情報を直接的に調べることができる。
研究チームはこれまでにも遠方にあるクエーサーのスペクトルから、鉄に対するマグネシウムの存在量比を報告してきた。今回、既知のクエーサーの中では2番目に遠いクエーサーである「ULAS J1342+0928」の詳細な近赤外スペクトルを分析した結果、鉄に対するマグネシウムの存在量比の対数がおよそ-1.0と著しく低いことがわかった。このような特徴は、標準的な超新星爆発では説明できず、太陽の280倍の質量を持ったファーストスターが「対不安定型超新星」と呼ばれる爆発を起こした結果だと考えられるという。
現在、私たちの銀河内でも重い元素の割合が非常に少ない星の中からファーストスターの痕跡の探索が進められているが、割合が少ないからといって必ずしも第2世代の星とは言えない。今回の結果が銀河内にも適用できる場合、銀河内で真に第2世代の星を効率的に識別できる可能性があるという。本研究結果は、9月28日に公開された「アストロフィジカル・ジャーナル」で公開された。
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