アインシュタインの特殊相対性理論、100年以上の時を経て実証される 阪大など

アインシュタインの電磁気における特殊相対性理論が初めて直接実証される 阪大など

大阪大学は21日、アインシュタインが100年以上も前に予言した特殊相対性理論が電磁気において成り立つことについての直接的な実証に初めて成功したと発表した。光に近い速度で伝搬する電子ビームの周りに生成されるクーロン電場の収縮を可視化し、相対論的電場収縮が形成される様子を観測した。21日付のNature Physics 誌に論文が公開された。

アインシュタインの特殊相対性理論、100年以上の時を経て実証される 阪大など
光速に近い電子ビーム(図中楕円)の伝搬に伴う平面電場収縮形成過程のイメージ

特殊相対性理論は1905年にアインシュタインが提唱した「光に近い速度で移動する物質は時空の歪みの影響を受ける」という一般常識を覆した理論である。論文中で述べられた「時間の遅れ」や「質量とエネルギーの等価」という物理現象は実験的に検証されて、この理論は現代物理の基礎となっている。しかし、論文のタイトルにもなった電磁気における特殊相対性理論の直接的実証は今まで行うことができなかった。

大阪大学、関西大学などの研究グループは、光速の99.99%の速度で移動する電子ビームの周りに形成される電場の時空間分布を計測した。超高速での電場計測を行うために、特殊な結晶の複屈折を利用した電気光学検出という手法を用いた。線形加速器で生成された高エネルギー電子ビームの周りの電場の時空間分布をピコ(10-12)秒単位で計測し、理論的に予想されていたクーロン電場が電子ビーム進行方向に収縮した様を可視化することに成功した。

さらに、金属境界を通過した電子ビーム周りの相対論的電場分布の発展を調べることで、平面的な電場の収縮がどのように形成されるかも明らかにした。

この研究では、電磁気における特殊相対性理論の直接実証という100年以上も残されていた課題を解決した。今回の研究で用いられた電場時空分布の超高速計測は、理論の実証にとどまらず、さらなる超高速・高エネルギー現象の研究を行う上でのプラットフォームへの応用も期待される。

画像提供:大阪大学(冒頭の写真はイメージ)