小惑星リュウグウの誕生の地を示唆 北海道大学など
北海道大学、東京工業大学、東京大学らの研究グループは、はやぶさ2が採取した小惑星リュウグウの試料を分析し、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石に共通する新たな特徴を見いだした。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石は天王星・海王星領域で生まれた可能性が高いという。なお、イヴナ型炭素質隕石は、隕石の中で最も揮発性元素に富んでいる種類であり、太陽の元素存在度比に最も近い組成を持っている。
火星と木星の間に広がる小惑星帯の小惑星は、鉄を主成分とした天体から炭素質な天体まで多様に存在している。しかし、それぞれがどこで生まれたのかはよくわかっていない。また隕石は、太陽系誕生後数百万年の間に生まれた微惑星や原始惑星の破片であり、小惑星帯の小惑星に由来することが分かっている。しかし、どの隕石がどの小惑星と対応しているか、その知見も十分ではない。ただ、木星より外側の領域は太陽系誕生当時から冷たい環境であったため、揮発性元素に富む微惑星は木星以遠で生まれ、揮発性元素に乏しい微惑星は木星より内側の領域で生まれたと考えられる。揮発性が小さいチタンとクロムの同位体比で隕石を分類すると、炭素質隕石と非炭素質隕石の二つのグループに分かれる。これは両グループが生まれた領域を木星が空間的に分断したためと考えられる。この説に従うと、リュウグウや炭素質隕石は木星の外側で生まれ、地球や非炭素質隕石は木星の内側で生まれたことになる。
これまでの研究で、リュウグウはイヴナ型炭素質隕石と同様の物質からできていることが判明している。今回、研究チームは鉄の同位体組成を精密測定したが、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の分析値に違いが見られなかった。一方で、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の鉄の同位体組成は他の炭素質隕石と明らかに異なっていた。鉄とチタンの同位体比で分類すると、炭素質隕石とも非炭素質隕石とも異なる第三のグループに分かれた。これは、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石が他の隕石とは全く異なる場所で生まれたことを示す。
巨大な惑星が誕生し、動き回ると、大きな重力による共鳴現象で周りにある微惑星を跳ね飛ばしてしまう。大部分の微惑星は外側に飛ばされるが、一部は内側に飛ばされる。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石は、隕石の中で最も揮発性元素に富んでおり、他の隕石とは全く異なる場所で生まれたことも踏まえると、太陽系の外れにある天王星・海王星領域で生まれ、天王星・海王星の重力共鳴により小惑星帯へと飛ばされた微惑星に由来すると考えられる。リュウグウのような Cb 型小惑星は、その微惑星が破壊された破片の一つであり、Cb 型小惑星が壊された破片が地球にやってきたものがイヴナ型炭素質隕石であると考えられる。
この研究成果により、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の関係性がますます強くなった。引き続き、他の元素の同位体組成が明らかとなること、また、リュウグウの正体が明らかとなることが期待される。
この研究成果は10月20日に、「サイエンス・アドバンシス」誌にオンライン掲載された。
画像提供:JAXA、北海道大学