環境に優しく再生可能な活性炭ベースの硝酸イオン除去剤を開発 千葉大
千葉大学は9日、自然環境の水からこれまで除去することが難しかった硝酸イオンを効率的に吸着することができる活性炭素繊維の開発に成功したと発表した。これによってより環境に優しく再生可能な、活性炭ベースの硝酸イオン除去剤の開発が期待できる。
硝酸イオン(NO3–)は植物に必要な主要な窒素栄養源の一つであり、肥料の成分である。その一方で適切な処理をせずに生態系を循環させたままにしておくと有害な作用を及ぼすことが知られている。
環境水中では藻類を発生させて水中の酸素を減少させるために水生生物の脅威となる。また、乳幼児の血液疾患や成人の消化器系のガンとも関連があるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあると言われている。
硝酸イオンは、廃棄物処理システム、農業廃水、家畜の排泄物などから排出されるが、水質汚染の処理に一般的に使用されている活性炭などの吸着剤では除去することができない。それは活性炭の炭素材料が負に帯電して鉛やカドミウムイオンのような正に帯電するイオンを吸着する効果があるのに対して、硝酸イオンは負に帯電していてお互いに反発するためである。
そのため、硝酸イオンを除去することのできる、簡単で費用対効果の高い新たな技術が望まれていた。
千葉大学の研究グループは吸着剤として活性炭素繊維(ACF:Activated Carbon)に着目した。ACFは従来の活性炭とは異なり、10~20μmという微細な炭素繊維の表面に、1~2nmの極小の穴が均一に形成されているのが特徴である。
しかし、その炭素表面が水と混ざりにくく硝酸イオンを吸着することができないという欠点があった。
同研究グループは、その欠点を改善ために、窒素原子を多く含んだポリアクリロニトリル(PAN:Polyacrylonitrile)炭素繊維を賦活し、さらに熱処理を加えることによって、優れた硝酸イオンの吸着特性を発揮するPAN系炭素繊維を開発した。
この素材は常の活性炭の吸着量(0.1mmol/g以下)よりはるかに多い、0.5mmol/gという優れた吸着特性を示した。
このPAN系炭素繊維を用いて河川、湖、海や地下水、水道水などの環境水から有害な硝酸イオンを除去処理することが可能である。また、煮沸(沸騰したお湯で煮る)、強い酸・塩基性溶液などによる処理にも耐えるので、簡単な操作で再生することもできるという。同研究グループは、今後、更なる性能の向上を図っていくとしている。
画像提供:千葉大学(冒頭の写真はイメージ)