日本海側に豪雪をもたらす線状の降雪帯のメカニズムを海上観測により解明 気象研究所など

気象研究所、水産大学校、東京大学などの研究グループは26日、日本海側に豪雪をもたらす線状の降雪帯、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の構造とメカニズムを海上観測により明らかにしたと発表した。

日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)は、冬の北西季節風がシベリアから吹いた時に形成される帯状の大気の収束帯。朝鮮半島の付け根の白頭山付近から数百キロメートル離れた日本列島まで到達し、山陰地方から北陸地方にかけての日本海側にたびたび豪雪をもたらしている。日本海側は世界でもまれにみる豪雪地帯で、2021年12月や2022年1月にはJPCZにともなう雪雲によって滋賀県南部・愛知県・三重県などにも豪雪をもたらし、東海道新幹線や高速道路など日本の交通の要衝にも影響を及ぼしたほか、2022年12月にも北陸地方を中心に大雪を降らせた。JPCZの発生のメカニズムは、朝鮮半島の白頭山を迂回する気流が合流することで発生するなどのいくつかの考えが提唱されていたが、確証がなかった。

研究グループは、水産大学校の練習船耕洋丸を用いて大気海洋同時移動観測を2022年1月下旬に実施し、JPCZの実態とそれに及ぼす暖かい海洋の影響を捉えることに成功した。

2022年1月19日から20日にかけてJPCZを横断しながら1時間毎の気球放球観測とそれと同期した海洋の温度塩分観測を行った結果、JPCZ中心部で風向は上空方向に90度激変しかつ強風化して、気流が収束していることがわかった。

気流がJPCZに収束することに伴い、周囲の暖かい海面から蒸発した水蒸気がJPCZに集中し、上昇気流が起こる。さらに雲の凝結により加熱されて、上昇気流が強化され、上空が加熱されることで地上の気圧が低下し、周囲から収束する風速が強まるため、周囲の海面からの水蒸気の供給もさらに増える。このように、JPCZは一旦発生すると自動的に強化されて持続する機構を持つようになる。

特に日本海を流れる暖かい対馬暖流から大量の水蒸気が供給されるが、JPCZに集まった水蒸気量を降雪に換算すると7時間で1メートルの降雪をもたらす量に相当し、まさに「線状の降雪帯」と化す。

今回の成果によって今後JPCZの予報の精度向上が期待されるほか、地球温暖化の研究や防災などにも役立てられそうだ。

観測で示されたJPCZ の構造と海洋の役割

画像提供:気象研究所(冒頭の写真はイメージ)