7月から電動キックボードの規制緩和 安全な利用のために必要なこと
警察庁は1月19日、普及が広がっている電動キックボードについて、全国統一の新たな交通ルールを7月1日から導入する方針を明らかにし、パブリックコメントの募集を開始した。
現在の電動キックボードのルール
現行法では、電動キックボードは2種類に分かれてルールが定められている。
1つ目は、個人所有の車両など、原動付自転車として分類されるものだ。
車両は、モーターの出力や最高速度に応じて、それぞれ原付バイクや普通自動二輪車などとして扱われる(速度制限は1種:30km/h、2種:60km/h)。また走行可能な場所は車道のみで、ヘルメットの着用も義務づけられている。右折方法は2段階右折で、利用時には運転免許が必要となる。
2つ目は、国の実証実験として貸し出されている電動キックボード車両だ。
現在、国の認証を受けた事業者が各地でシェアリングサービス実証などを実施している。この場合は、法律上は「小型特殊自動車」として扱われている。そのため、最高速度が15km/h以下に設定されており、利用する際は運転免許が必要となる。
1つ目と異なるのは、走行場所が車道に加えて自転車専用道路も走ることができる点だ。右折方法は小回り右折で、ヘルメットの着用は任意となるなどの特例もある。
新たなルールではどう変わる?
7月1日施行見込みの新しい規制を盛り込んだ改正道路交通法では、原付バイク・オートバイとして分類されていたものは現行法と変わらない。
一方で、最高速度や大きさなどの基準を満たした車両は「特定小型原動機付自転車」として分類されることになることから、電動キックボードをはじめとする電動小型モビリティにも、自転車と同様の交通ルールが適用されるようになる。
「特定小型原動機付自転車」に該当するための基準は、最高速度が車道の場合20km/h、歩道の場合は6km/hで、右折方法は2段階右折になる。車両については、最高速度を表示する緑色のランプの設置が必要になり、ナンバープレートの取得、ライト・ミラー等の装備も必要となる。利用時に運転免許は必要ないが16歳未満の運転は禁止となり、ヘルメットの着用も努力義務になるという。
電動キックボードを取り囲む現状
電動キックボードをはじめとする電動小型モビリティは新しい乗り物であるため、世界中で普及が進む一方、安全・便利に走行するためのルールを各国が模索している状況だ。
日本では、電動キックボードは保安基準を合わせると原動機付自転車の規格に該当する。現在は、原動機付自転車の走行ルールが適用されているが、未だ新たな電動小型モビリティ群に合わせたルールは整備されていない。
保安基準を満たさない車両が家電量販店やECサイトにて容易に購入できることから、本来であれば公道走行不可の電動キックボード車両による違反走行などが問題視されている。
実際、2022年9月には東京・中央区の駐車場で電動キックボードを飲酒運転した50代男性が車止めに衝突して転倒し、頭を強く打って死亡する事故も起きている。この事故では、国の実証による車両を利用していたためヘルメットの着用義務がなく、男性もヘルメットは着けていなかったという。
事業者とユーザーがルールを理解して安全な利用を
1月19日の警察庁の発表を受け、電動キックボードなどシェアモビリティプラットフォームを展開するLuup(東京都千代田区)は、同社の今後の取り組みについて発表した。同社では、新しい交通ルールの周知に向けた啓発活動と、改正道路交通法に合わせた車両・サービスのアップデートをしていくとしている。
電動キックボードのような新たなモビリティは、私たちの生活をより快適にしてくれる交通手段だ。電動キックボードのサービス提供側である事業者が新ルールに適用していくように、同時に、ユーザー側も新たな交通ルールを理解したうえで、より安全に便利に利用していきたい。
(写真はイメージ)