光エネルギーによってCO2から燃料を生成する仕組みを解明 千葉大学
千葉大学は27日、酸化ジルコニウム(ZrO2)とニッケル(Ni)からなる光触媒によって、CO2からメタン(CH4)を生成する仕組みを明らかにしたと発表した。この結果をもとに新たなカーボンニュートラルサイクルの実用化が期待される。
日本国内でも2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現することが目標とされているが、CO2を燃料に戻すことができればこの目標の実現に近づく。そのためには、燃料に戻す反応には再生可能エネルギーを用いることと、反応で用いる試薬や装備はなるべく安価であることが求められる。太陽光などの光エネルギーはその役割を果たすことが可能だが、問題となるのは光触媒に紫外可視光を照射して反応させる光反応システムの効率化である。
千葉大の研究グループは、過去にZrO2とNiとを組み合わせた光触媒がCO2からメタンを生成する世界最高レベルの触媒であることを報告しているが、他の金属光触媒では同様の結果がなぜ得られないのかはわかっていなかった。
今回、研究グループは反応の仕組みを解明するために、ZrO2表面の酸素原子を失った場所(図中の□)に着目した。この□サイトはCO2を捕らえる役割をしている。炭素の同位体を用いた実験とコンピュータシミュレーションによって、CO2はまず□サイト上に捕らえられ、次に水素(H)原子と反応してOCOHとなり、さらに□サイトに水酸基(OH)が入り込むと同時に一酸化炭素(CO)を生成すること、このCOがZrO2表面の□サイトから近くのニッケル(Ni)に移ることでメチン、メタルを経てメタンを生成することがわかった。
ZrO2が触媒としてこの反応を進めるためには、COが抜けた後にさらにO原子が抜けて□サイトが再生され、反応サイクルが繰り返される必要がある。O原子が抜けるにはエネルギーが必要だが、ZrO2の□サイトにCO2が吸着する際に熱を出すために、差し引き1.7eV与えるだけで反応が進められることがわかった。このことからZrO2のみでCO2光燃料化が進む理由が初めて明らかになった。
今回の研究によって解明された反応経路や有効なサイトの情報をもとに、今後さらに有効なCO2の光燃料化、あるいは CO2光資源化(光エチレンや光プロピレン)の反応設計が可能となることが期待される。
画像提供:千葉大学(冒頭の写真はイメージ)