窒素―アンモニア変換効率の向上に成功、CO2フリーへ期待 大阪大
大阪大学は16日、英国インペリアルカレッジロンドンとの共同研究によって、水と電解液の構成成分の濃度を精密にコントロールすることで、電気化学的な窒素―アンモニア変換効率が向上することを世界で初めて明らかにしたと発表した。これにより、二酸化炭素フリーなアンモニア合成の実現が期待される。
アンモニア(NH3)の合成法として知られるハーバーボッシュ法は、高温高圧で大気中の窒素(N2)を触媒変換するが、極めて大きなエネルギーを必要とする。常温・常圧でのアンモニア合成法が検討されてきているが、電気化学的に窒素を還元しアンモニアを合成する方法が、大規模化が容易であることなどの特徴から注目を集めている。理想的な変換システムは、窒素源として窒素ガスを、水素源として水(H2O)を用いるものになるが、既存のシステムでは窒素の還元反応よりも水の還元反応が優先的に進行することで、アンモニア変換効率が劇的に低下することが課題だった。
研究グループは、水と電解液の構成成分の濃度を精密にコントロールすることにより、電気化学的な窒素―アンモニア変換効率が向上することを発見した。その原因としては、電解液中の構成イオン(主としてリチウムイオン)が、電解液のその他の構成成分(有機溶媒など)との弱い相互作用によって形成する溶媒和構造が最適化されることと、それによって電極表面に形成する保護膜(Solid electrolyte interphase; SEI)の特性が向上することが考えられる。
この結果は、従来不可能と思われてきた、窒素と水を出発原料とする理想的な電気化学的窒素―アンモニア変換システムの実現に向けた第一歩だという。研究チームは今後この成果をもとに、電解液と電極、そしてその境界に存在する界面を丁寧に理解しながら、クリーンなアンモニア合成を実現していくとしている。
画像提供:大阪大学(冒頭の画像はイメージ)
参考記事:
排ガス中の窒素化合物の循環利用を後押しする新技術を開発 産総研(2023.02.07)
世界初、可視光エネルギーを用いてアンモニアを合成 東京大学など(2022.12.07)