パン酵母を用いて海水や温泉水からレアアース回収に成功 大阪公立大
大阪公立大学は23日、海水や温泉水などの環境水中に微量存在するレアアースを、リン酸基を付加したパン酵母を用いて回収することに成功したと発表した。低コストかつ低環境負荷な金属回収への応用が期待できる。
レアアース(希土類元素)は産出量が少ないレアメタルの一種。少量を他の金属などに添加すると耐熱性や強度などを高めることができ、磁性体材料や蛍光体、超電導材料などが主な用途だ。
今後も需要が増え続けると予想されるが、安定供給が大きな課題となっており、精密機器からのリサイクルや、海水や温泉水からの回収などが検討されている。後者の場合、多くの不純物が含まれる混合溶液からごく微量の有用金属を取り出すのは難しく、高効率で環境に優しい金属回収技術が求められている。
大阪公立大の研究グループはこれまで、パン酵母に食品添加物を用いてリン酸基を修飾することで、P-yeastという安全で高い吸着能力を持つ材料を開発してきた。この材料はレアアースと他の金属イオンが含まれる溶液で、pH(水素イオン指数)を調整することでレアアースを選択的に吸着できることを確認していた。しかし、環境水などレアアース以外の成分を多く含む条件で同様の効果が示せるかは不明だった。
今回、P-yeastの性能を評価するため、実際の海水を模した高濃度のナトリウムイオンを含む合成海水にレアアースを添加して、溶液中からのレアアースの吸着を評価した。それにより、pH調整によりジスプロシウムやイッテリビウムを選択的に吸着できることが分かった。
次に、レアアースを含む強酸性の秋田県玉川温泉の温泉水を用いてレアアースの吸着を評価した。この温泉水にはセリウム、ガドリウムなどが数~数十ppb(part per billion、ppmの千分の一)の濃度で含まれているが、やはりpH調整により選択的に吸着できることが分かった。
この材料は有用金属回収や有害金属除去としての活用が見込まれる。また、余剰酵母などの産業廃棄物を原料とすることで、より低コストかつ低環境負荷の技術となるという。同グループは、今後もさまざまな環境水に対して実績を重ね、連続的な操作で大量に金属資源を処理できる仕組みの構築を目指すとしている。
画像提供:大阪公立大(冒頭の写真はイメージ)