美容業界や医療分野が注目 メラニンの生成には、銅と亜鉛が重要な役割 京大など
メラニンは皮膚や毛髪、目の虹彩の色を決める主要な色素であり、紫外線から肌を守る大切な役割がある。しかし過剰なメラニンはシミの原因となるため、美白化粧品にはメラニン生成を抑制する成分が使われている。メラニンの生成には「チロシナーゼ」「チロシナーゼ関連タンパク質1」「チロシナーゼ関連タンパク質2」という3つの酵素が関わっており、その活性化に銅が重要であることが知られていた。
しかし、京都大学などの研究チームは、メダカと人間の培養細胞を用いて、メラニンの生成には銅だけでなく、亜鉛も重要な役割を果たすことを明らかにした。国際学術誌「Communications Biology」に掲載された。
同研究チームはこれまで、2つの亜鉛トランスポーター(ZNT)複合体が、いくつかの亜鉛を必要とする酵素に亜鉛を供給する役割を果たすことを報告してきた。その研究の中で2つのZNT複合体が欠損したメダカを作ったところ、野生のメダカに比べて色調が薄く、体内のメラニン量が大きく減っていた。
欠損メダカではメラニン生成の場であるメラノソームが未成熟であり、2つのZNT複合体がメラニン生成に関わっていると考えられた。次に人間の培養細胞でも2つのZNT複合体を欠損させると、元に比べて色調が薄くなり、メラニン量も減っていた。更に調べると、「チロシナーゼ関連タンパク質1」が発現していないことが明らかになった。
「チロシナーゼ」と「チロシナーゼ関連タンパク質1」は、70%以上のアミノ酸配列が一致しており、金属が結合する箇所も全く同じだ。しかし、今回の研究で「チロシナーゼ」は銅が必要な酵素であり、「チロシナーゼ関連タンパク質1」は亜鉛が必要な酵素であることがわかった。
この発見は、これまで70年以上にわたり、銅のみがメラニンの生成に必要であると信じられてきた説を覆すものだ。今後の美容業界や医療分野において、より効果的な美白化粧品やシミ治療法の開発が期待される。
(写真はイメージ)