レアメタル不使用でも高電圧・高出力の空気電池を開発 東北大学

東北大学は4月27日、レアメタルを用いないで従来よりも大容量で高電圧の空気電池を開発したと発表した。空気電池の電圧と出力を高めたことで、今まで限られていた用途を電気自動車やドローンに拡大する可能性が示された。

亜鉛を負極に用いた空気電池は容量の大きさから次世代のエネルギーデバイスとして期待されている。しかし、亜鉛空気電池は電圧が1.4V程度で、リチウムイオン電池の3.7Vと比べて出力が低く、低出力で長時間駆動する補聴器など限られた用途にしか用いられていなかった。

研究グループは、正極にAZUL触媒電極を使用すること、および正極側に酸性電解質、負極側にアルカリ電解質を配置したタンデム(二頭立て)型セルを作成することによって、電圧の問題を解決した。

正極に用いる「AZULL(Azaphthalocyanine Unimolecular Layer)」触媒電極は、レアメタルフリーで高い酸化還元反応を示す。青色顔料の一種である鉄アザフタロシアニンを炭素上に分子吸着して作り、アルカリ環境下で白金炭素(Pt/C)に匹敵する性能を示すことが明らかとなった。

タンデム型セルは、電解液室を二つにしてその間を陰イオンだけを通す交換膜で仕切って、酸性・アルカリ性電解質を配置した。これによって正極側を酸性に、亜鉛負極側をアルカリ性にして大きな電圧を得られるようにした。

この結果、2V以上の電圧(最大2.25 V)を発生させることに初めて成功した。これはこれまで報告されているレアメタルフリー正極触媒を用いた亜鉛空気電池の中で最も高電圧・高出力である。また、AZULL触媒は白金触媒が劣化する強塩酸環境下でも高い触媒活性を維持できることもわかった。

今後は、セルのスタック化や大面積化などを通して、ドローンなどの輸送デバイスに適用可能な金属空気電池の開発を進めていくとのこと。

 

同研究で開発した AZUL 触媒電極と酸性・アルカリ性電解質タンデム型亜鉛空気電池セルの模式図、および出力・放電特性。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)