AIを活用して航空写真からナスカ地上絵を発見する方法を開発、山形大と日本IBM

ナスカ地上絵を航空写真から深層学習技術によって発見する手法を確立 山形大

山形大学は日本IBMと共同で、AIの深層学習技術を利用して航空写真からナスカの地上絵を発見する手法を確立し、新たな地上絵を4つ発見、その成果が国際学術雑誌に掲載されたと発表した。

AIを活用して航空写真からナスカ地上絵を発見する方法を開発、山形大と日本IBM

山形大学と日本IBMは、世界遺産ナスカの地上絵(南米ペルー共和国)に関して国際的な共同研究を行っている。今回の研究成果は、高解像度の航空写真から具象的な地上絵を発見するための実証実験についてのもの。

広範囲の航空写真から肉眼による判定で新たな地上絵の調査候補を見つける従来の方法は膨大な年月が必要で、効率的な方法が望まれていた。一方で、今回利用した深層学習の技術による物体検出の手法を用いるには、トレーニング・データの与え方が課題だった。既知の地上絵の絵柄はそれぞれが唯一無二で、新たな地上絵も既存のものと同じ絵柄ではないと考えられるため、既知の地上絵をそのままトレーニング・データとして利用して新しい地上絵を見つけることは困難であった。

研究グループは、既知の地上絵の絵柄を細部に分割して、図像要素と類似したものが新しい地上絵にも存在するという仮説を立てて、トレーニング・データを作成した。ナスカ台地北部の既知の地上絵は21点だが、細部に分割し異なるスケールで画像を切り出すことで、トレーニング・データを307点まで増やすことができた。

こうした対策を講じて作成した物体検出モデルを用いて航空写真から図像要素を検出、新たな調査候補をリストアップしてその後の現地調査に活用した結果、ナスカ台地北部から新たに4つの地上絵が発見された。それは人型(5m)、脚(78m)、魚(19m)、鳥(17m)の地上絵で、このうち人型のものは2019年11月に公表済み。AIの深層学習技術を用いることで、肉眼で航空写真から地上絵を探すよりも、約21倍速く地上絵の候補が特定できた。

研究グループは今後さらに深層学習技術を利用した地上絵の分析調査に取り組むと共に、ペルーとも協力しAIによって発見した地上絵を保護する活動を展開していくとのこと。

画像提供:山形大学(冒頭の写真はイメージ)