保育園でオンライン国際交流の実証実験 主体性や探求心が上昇
未就学児向けオンライン海外交流サービスを提供するシンクアロット(東京都渋谷区)は、オンライン国際交流による子どもたちの変化・成長を測定する半年間の実証実験を完了したことを5月10日に発表した。プログラムを通じて子どもたちにポジティブな変化が見られ、特に主体性や探求心が上昇したことがわかった。
実証実験は国際基督教大学とともに、2022年夏から半年間かけて行われた。シンクアロットの提供する保育園・幼稚園向けオンライン世界交流プログラム『EN-TRY(エントリー)』をベースに、京王子育てサポート・ポピンズエデュケアが運営する保育施設の年中・年長園児(合計52名)に向けて海外交流プログラムを実施し、前後での子どもたちの成長を、主体性・探求心・SDGsマインド(多様性理解・受容)を軸として測った。
オーストラリアとタンザニアのプレスクールとオンラインで繋いで実施された交流プログラムは、通訳兼ファシリテーターとなるパペットを使って行われた。お互いの言語でのあいさつから始まり、ジェスチャーゲームや手遊びなどノンバーバルで楽しめるプログラムもある。子どもの興味関心を最大限に高めた状態で挑めるように、オンライン交流を行う当日まで1ヶ月半の期間をかけて、相手の国のことを学んだり、その国にちなんだことを普段の保育に取り入れたり、ビデオレターを交換したりとさまざまなアクティビティに取り組んだ。
プロジェクト結果は、子どもたちへのワークシート形式による定量的結果と、各保育施設の先生および保護者に対するインタビューやアンケートによる定性的結果をあわせて分析された。その結果、同プログラムを通じて子どもたちにはポジティブな変化が見られ、特に主体性や探求心に関する設問スコアが上昇した。他方、SDGsマインド(多様性理解・受容)に関する設問では、年中・年長児時点でも一部の子どもたちは日本の文化傾向に近いキャラクターを望み、相対的に海外の子どもたちに対して抵抗感があることも明らかになった。
また交流プログラムを通じて、通訳無しで相手と話したいという声が出て、英語で挨拶と自分の名前を話せるように練習したり、交流が終わってからも学んだ内容をもとに子ども同士でクイズを出し合ったり、街中の国旗やテレビで出てくる相手の国に反応するようになるなど、世界観が広がり、海外のことや言葉に興味を持つ子が多く、世界を身近に感じる良いきっかけになったという声が上がっているという。
国際基督教大学の直井望上級准教授は同プロジェクトに対して、自分と異なる特徴を持つ集団の人々に対するバイアスは生後3〜5歳から始まり増加していくとされているが、幼少期における異文化交流はそうしたバイアスを減少させ、主体的な学びや探究心にポジティブな影響を与えて、多様性の理解を促進する可能性がある、としている。
画像提供:シンクロアット