宮古諸島の固有生物の起源は水没した島? 東北大など仮説を発表
東北大学は20日、宮古諸島に生息する固有種の起源は沖縄本島と宮古諸島の間にかつて存在し現在は水没した陸地だという仮説を発表した。産業技術総合研究所、琉球大学、秋田大学と共同で、地球惑星科学のオープンジャーナルに論文が公開された。
宮古諸島は、最高所でも標高約110mの平坦な地形の島で、現在までに水没と隆起を繰り返してきたとされる。宮古諸島が陸地となってから多種多様な動植物が生息するようになったが、その中にはヘビ・トカゲ類など海を渡る能力が非常に乏しいにも関わらず、360kmも離れた沖縄本島に生息する集団と近縁なものが含まれており、それらの陸生種の起源がわかっていなかった。
研究グループは、地質学および生物系統地理学の最新のデータを統合し、沖縄本島と宮古諸島の間に巨大な島が存在して、沖縄本島から宮古諸島への生物移住の経由地となったという仮説を提唱し、その領域のことを「沖縄-宮古海台(Okinawa-MiyakoSubmarine Plateau.:OMSP)」と名付けた。
この海域の地質と化石年代のデータを分析したところ、OMSPは550万年~27万年前に陸域であった可能性があることが分かった。200万年前には沖縄本島とつながって400kmに渡る巨大な島が形成されており、この時に沖縄本島の動植物がその分布をOMSPまで広げたと考えられる。170万年~140万年前に沖縄本島とOMSPは海で隔てられ、渡海能力のない生物は遺伝的に隔離された。宮古諸島は125万年前から繰り返し水没したが、OMSPはその間も陸域として存在し続けた。40万年前から宮古諸島は隆起に転じ、OMSPの動植物は宮古諸島に移住した。やがてOMSPと宮古諸島は隔離され、27万年前以降にはOMSPは完全に水没してしまったと考えられる。
地質学と生物学、あるいは分子遺伝学と古生物学といった、異なる学問領域を融合させることで、これまでにない成果を得ることができた。琉球列島は奄美大島など世界自然遺産に登録されている地域もあり、それらに注目が集まりがちだが、今回の研究により宮古諸島の島々と生息する生物たちの貴重さが改めて示される形となった。自然遺産に登録されていない地域も含めたより広い範囲の島々とその生物に対して、保護・保全を含む持続的利用に向けた施策が重要となるのではないだろうか。
画像提供:東北大学(冒頭の写真は宮古島固有種のミヤコカナヘビ)